ゲームシナリオライターの仕事 名作RPGに学ぶシナリオ創作術
- 作者: 前田圭士
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2006/07/29
- メディア: 単行本
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本書もまずハリウッド映画の構成の話からはいる。ありがちなパターンとして映画脚本の話をして終わりというものがあるが、本書はそんな失敗はしていない。「シナリオの構成や書くべき内容」は同じだからそこを見てくれ、ということがきちんと意識されている。
全体が非常に綺麗にまとまっている。これは著者の「シナリオは構成でものを語る手法である」に対応しているわけで、構成がずさんな本で「構成が大事だ」と言っても説得力が無いのは当然。通常のシナリオとコンピュータゲームのシナリオとの違いを明確に意識しながら「構成」や「意図」、そして具体的な技術を解説してくれる。(41ページにある「本当に言いたい台詞は言わせない」というのも、シナリオ一般論とゲームシナリオ論と併記してある。)
類書を読んだことのある人なら、まず、各章の最後にある「本章のポイント」を読んでから本文を読み、最後に再びポイントを読むという形が良いと思う。(類書を読んだことがなければ、素直に読めばよい)
あとは、インタビューが面白い。桝田省治、重馬敬、さくまあきら、芝村裕吏、の4名。いずれもチーフの立場にいる人だが、話の内容は、桝田氏、重馬氏がライターの、さくま氏、芝村氏がディレクター・プロデューサーの、視点での話が中心になっている。芝村氏のインタビューなど、いきなりプロダクト・スコープの話である。(で、芝村氏のインタビューはほぼ本書の末尾である。こういうところまできちんと分かり易く構成されているのが本書のいいところ)。
本書のメインターゲットはおそらく、10代後半〜20代のシナリオライター志望者だろう。だから、後書きには「実践しろ、ちゃんとやれ」と繰り返し書かれている。
大丈夫です。ほとんどの人は「読んでも、わかっていても、やらない」んです。もし、読んで、わかったうえに、ちゃんとやれば、あなたが勝ちます。そして、最初に書いた次の3つの心構えを忘れないでください。
- 「なぜ」面白いのか? を考えるクセをつける
- 面白いと思ったことをマメにメモして残す
- シナリオは偶然の産物ではなく人間が作るものだと強く意識する
(p.308)
有名な「7つの習慣」でも「実際にはこのうちの1つでも2つでも実践できれば、全然違いますよ」と言われるものな。
後書きによれば、著者の手元にはまだ「160ほどの項目が紹介できませんでした」とネタが大量に残っているようなので、是非続編を期待したい。
ところで、さくま氏の
で、業界入ったらトヨタ流の本を読んで欲しいんだよ。もうね、オレはこの本を読んでない人とは仕事したくないんだ。(p.236)
とか、芝村氏の
もしゲーム業界に入ってくることになったら、いい上司に会えるといいですね。そういう人に会えるかどうかは運なので、いい上司に会えるようにお祈りしてます。いい上司に出会って、いい仕事をしてください。(p.290)
とか、私はゲーム業界にいるわけではないが、正直シャレになってないです、この辺。(^_^)
あとは、伏線の張り方などについては、「天外2」「ルナ」のような90年代前半と「ダメなものはタメになる」(http://d.hatena.ne.jp/k-takahashi/20061209/1165653644)のような時代になってしまった現在とでは、少し考え方を変えるべきなのかもしれない、とも思った。(別に本書の価値を下げるものではない。「手が広がった」と考えるべき)