- 出版社/メーカー: ジャパンミリタリーレビュー
- 発売日: 2010/01/09
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世界で唯一、ステルス機を実用化しているアメリカでは、不思議と対レーダーミサイルのステルス化に熱心ではない。
(中略)
アメリカは安いミサイルを大量に使う方を選ぶ傾向が強い。
XASM-3のようなミサイルは高性能、高機能な反面、高価で、数をそろえなければならないアメリカにとっては必ずしもベストの選択ではない。逆に、航空自衛隊や海上自衛隊のように限られた戦力で長大な海岸線を守る必要がある場合は、一発の効果が大きいミサイルが必要だ。それぞれの国の持つ「お家事情」によって求めるものが違ってくるのは当然(p.53)
青木謙知氏の「実戦で活躍 V-22オスプレイ」は、V-22の現状紹介記事。日本のF-2もそうだけれど、一部から妙に低く評価されている装備というのはあるが、その実情を解説している。
開発初期での重大事故が4件あり、全部で20名の犠牲者を出しているのは事実だが、それらの事故の分析と対策はきちんと行われたことを記述している。実際、イラクでのMV-22Bの作戦完遂率は98%となっている。これは信頼性の低い機体で出せる数字ではなさそうだ。(コスト関連については、記事中に記載はないが)
一つ面白かったのが、ダウン・ウォッシュについて。特に救援ミッションの際に問題になる話だ。一般にはオスプレイのダウンウォッシュは強いというのが定説だが、メーカーによると、ローターが2つに分かれているのと、それが機体の中心からはずれた位置にあるため、実際の活動範囲となる機体中心直下のダウン・ウォッシュはH-53と変わらないのだそうだ。なるほど。
福好昌治氏の「アメリカ海兵隊のグアム移転計画」は、れいの移転計画の経緯と内容の解説。
軍事的には、アジアから遠くなることによる問題、司令部と実戦部隊の距離による人間関係構築の問題、グアムでの訓練地域不足問題、気象問題、グアムでの労働力確保問題、などがあるとしている。
米軍が朝鮮半島有事や台湾海峡有事に海兵隊を投入するオプションを有しているのなら、グアムへの後退は米軍のプレゼンスの低下となり、有事になっても米軍は介入しないのではないか、という誤解を与える恐れがある。(p.194)
これもねえ。それでも、政治決定に従ってグアム移転を検討したのに、日本の対応があれだからなあ。そりゃ担当者は怒るよ。
野木恵一氏の「SLBMと核抑止体制」は、ポラリス潜水艦から始まるSLBMの経緯解説。
SLBMが技術的制約から破壊力と命中精度が低いことに関連して。
命中精度の低さと威力の低さを合わせれば、SLBMは範囲が狭くて強固な軍事目標の攻撃にはまったく適さず、脆弱で広い都市目標の攻撃にしか向かないとの結論になる。これは、むしろ相互確証破壊の理論からすれば好ましい特性である。なぜならSLBMでは相手の戦略核戦力、特に強固に防御されたICBMサイロを潰すことはできず、SLBMによる先制奇襲は対兵力では意味がないとされるからだ。(p.212)
この話は冷戦時代から説明されていた話なのだが、これがトライデントIIの性能向上によって話が変わってきてしまっているとか。
上述の「安いミサイル」の件もそうだが、兵器の評価とは色々難しいものだ。