k-takahashi's blog

個人雑記用

マンガでわかる菌のふしぎ

 ヴォイニッチの科学書の中西貴之氏による細菌紹介本。見開き1項目で、左が文章、右がイラスト、という、いわゆるお手軽書籍。でも、中身はなかなか面白い。個々の項目を楽しめば良い本なのですが、個人的に面白かったところを幾つか。

  • 食物連鎖と海洋細菌。 従来の食物連鎖は「プランクトン→大きな生物→死骸を細菌が分解→分解された無機物がプランクトンへ」というものだったが、海洋細菌が直接関わっている可能性が検討されているそうだ(p.36)
  • ハイパースライム。 深海熱水噴出口の話はよく知られているが、ここに居る細菌は、実は熱水共々地下からわき出てきているのだそうだ。じゃあ、地下はどうなっているのか? それはまだ不明。(p.60)
  • 太陽エネルギー。 深海細菌は太陽エネルギーと無縁のサイクルで生きている。とすれば、地球外生命体も? (p.68)
  • 深海生物と地球外生物。地上と全く無縁の深海生物群は、しかしよく調べてみると意外に普通。つまり、環境が大きく異なっていても、生まれてくる生物は似ている可能性がある。(p.96)
  • スローライフ。地下数百メートルのところに住む細菌は、非常に反応が遅い。細菌の繁殖というとものすごいスピード、というイメージがあるが、こういった地下細菌は一回の分裂に数百年かかると推測されている。(p.104)
  • 宇宙のサルモネラ。宇宙空間で生活したサルモネラ菌をマウスに感染させたところ、病原性が強くなっていたという実験結果がある。しかし、遺伝子の活性化状況には変化が無く、病原性が強くなった理由は不明だそうだ。(p.124)


 他に、繰り返し出てくる話として、見つけにくさの例が面白かった。特殊な環境でないと育たない細菌はその環境を再現しないと培養できない。ところが、そんな環境を再現することは難しく(そもそも、どんな環境で育つか分からない。いるかどうかすら不明)、それが発見を妨げていた。これが解決したのは、遺伝子を直接分析する技術が発達したから。
測定技術って大事だよな、と。