k-takahashi's blog

個人雑記用

参政権

まずは例え話

エヌ氏はX市に住んでいるビジネスマンである。職場は隣のY市にある。
数年前から仕事が忙しくなり、食事は三食とも会社の近くで食べ、土曜日も大抵は出勤して仕事をするようになった。そこで、エヌ氏はY市内、会社の近くの中古のワンルームマンションの一室を購入し、普段はそこに住むようになった。

そんなおり、Y市でワンルームマンション規制・課税強化条例が話題になった。エヌ氏本人にとっても、エヌ氏の会社に勤める他の従業員にとっても他人事ではない問題である。この問題が市議会補選の争点となり、エヌ氏らは穏健派の候補者を応援することになった。
しかし、エヌ氏本人の住民票はX市にあるため、Y市での投票権は無かった。エヌ氏は意見を表明することも、候補の応援をすることもできたが投票はできなかった。


その後、エヌ氏はこんな訴えをした。
「私は生活の大半をY市で過ごしている。住民票はたしかにX市にあるが、Y市にあるマンションに関連した税金は払っているし、消費だって大半はY市だ。選挙に出させろとは言わないが、せめて投票権くらいは認めてくれないのか」と。

エヌ氏の親族はX市の家の近くにおり、古くから近所づきあいしてきた人たちもX市にいる。「自分はY市民だ」とは言い切れないエヌ氏は住民票はX市に残したいと思っていた。心情的には分からないでもない。
でも、普通の反応は「Y市で投票したければ住民票をY市に移せ、それができないなら我慢しろ」、だろう。

誰が不満か?

一方、もしエヌ氏にY市の投票権を与えたとしたら、Y市に住みY市で仕事をしている人(仮にエス氏としよう)はどう思うだろうか。
エス氏から見ればエヌ氏が優遇されているようにしか見えず、不公平だと感じるだろう。
勿論、エス氏は立候補する権利がありエヌ氏には立候補する権利はない。しかし、それで納得するだろうか。例えば上記の課税問題を例に取れば、「エス氏は立候補できるのだから、エヌ氏に投票権を認めるくらいいいだろう」とか「じゃあ、エス氏にX市での投票権を与えよう」とか言われてもエス氏は納得しないだろう。そもそも大半の人にとって、被選挙権は持っていても行使しない権利でしかない。

更に先の問題

で、実は問題はここで終わらない。
エヌ氏の反論の一つはおそらく「自分はY市で活動しており、Y市にもそれなりの税金を納めている。自分はY市のステークホルダーだ。だから、投票権くらいは認められてもいいはずだ」というものになる。
ところがこのロジックだと、エヌ氏の勤める会社はどうなるだろうか。
会社は人ではないが、「法人」ということから分かるように、部分的に人扱いされている面もある。会社もY市で活動しており、税金を納めており、Y市のステークホルダーであることは明らかだ。さて、会社に投票権を認めるべきだろうか? 代表無くして課税無し、というスローガンは法人には認められないのだろうか?
法人は死なないから? 企業の平均寿命はせいぜい数年だし、長生きした人から参政権を取り上げることになりかねない話だ。
企業は普通の人とは違う? 普通でない行動をとる人間はいくらでもいる。違法行為をした場合以外は彼らだって普通に参政権は持っている。


そして、法人の先には、エイリアン(異邦人ではなく、異星人)、アップリフトされた生物、ロボット、そしてAIの参政権の問題がある。(それに平行して、重度障碍者の問題も再燃するだろう。)
現時点では単なる思考のお遊びでしかないけれど、どうせ外国人参政権のことを考えるなら、そういうスパンで考えた方が面白くなる。
個人的には、最終的には全部認めることになるだろうと思っている。

まあ、現実は

安易に参政権を拡大した場合の寓話は星新一ショートショートで描かれているが、一度与えた参政権を取り上げるのが実質不可能という現実がある以上、実際上はゆっくり慎重に進める以外の方法は無いんだろうと思う。
そういうときに妨げになるのは、怪しげな連中。本当に外国人参政権を推進したいと思うなら、まず、そういう怪しげな連中対策をしないといけないんじゃないかな。