コマンドマガジン Vol.82(ゲーム付)『Second Front Now』『張鼓峰1938』
- 出版社/メーカー: 国際通信社
- 発売日: 2008/08/20
- メディア: 大型本
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仮想戦をどう位置づけるかというのは、ヒストリカル・シミュレーション・ウォーゲームの場合は常に問題で、編集部でもかなり議論があったことが伺える。編集部記名の記事によると
もう少しきめ細かく見ると、
1)起こりえた歴史として検証するに充分な妥当性をもつテーマ
2)歴史の流れを年単位、人物単位で偏光して、新たに提示される戦場やシチュエーションを舞台とするテーマ
3)近未来、未来を舞台とするテーマ
(pp.18-19)
だそうです。(1)の典型が実施されなかった作戦(マルタ島攻略戦)、(2)はいわゆる歴史改変モノ。
この記事中では、古参プレイヤー同士の「英国本土決戦」のプレイの様子が描かれており、出目の悪さから悪循環に陥ってしまい、装甲部隊の分散運用という失敗をしてしまった様子を紹介している。
これが、40年の対仏戦であれば、あるいは41年のバルバロッサ作戦であれば、絶対にこんなプレイにはならないスキルを持ったプレイヤーだ。しかも、もすかすると彼は、史実におけるドイツ軍の振る舞いに詳しかっただけで、装甲部隊の集中運用という電撃戦の本質を掴んでいなかったのかもしれない。
これは極端な例だとしても、例えば、仮想戦が、史実という最良の教科書がない第二次大戦の戦場だと思えば、むしろそこに登場する軍のドクトリンをどのように反映し、勝利に結びつけるかという課題は、かなり挑戦的かつ魅力的とも言えるのではないだろうか。
中年ゲーマーなら知っているエピソードだと思うが、タクテクス誌の3号(SFゲーム特集。1982年)の
第二次大戦のフランスは、戦車に対する古い考えを捨てきれなかったが故に、ドイツの電撃戦に敗北した、とされている。これを笑うのはたやすいが、SFゲームで宇宙船をあたえられたときその新兵器の特徴を掴みきれず、フランス軍と本質的に同じ過ちを犯さない自信があなたにあるだろうか。
という問いは未だに有効なのだろう。
そして、それはもちろん、どのようにゲームのテーマを選択し、どのような手法でデザインするかという問題にも繋がる(例の、帰納的・演繹的デザインの問題)。だから、コマンド誌は仮想戦を折を見て紹介しているのだろう。
ちなみに、ビジネス的には、ナチスの英国上陸作戦を扱ったゲーム「英国本土決戦」が、「編集部の出版史において、屈指の売れ行き低迷号であったことは、仮想戦を取り巻く環境を雄弁に物語っている」というのが面白かった。編集部は販売数や売れ方を知っているわけですからね、なるほど。
長らく続いていた「ゲーマーいちねんせい放浪記」は今回をもって終了。せんぱいこと宮永氏がコマンドを離れることが理由でしょうか。編集部の時間を相当費やさないと記事が書けないわけで、大変だったと思います。ご苦労様でした。
好きな連載だったので残念。増補改訂して、単行本にしませんか?
入れ替わるような形で、ASLの戦術研究指南の連載が開始となっている。
中国が軍事的領土拡張を開始した状況をテーマにした "Red Dragon Rising"(RDR)の紹介を、アジアン・フリート(AF)のデザイナー篠原史也氏が記事にしている。自衛隊の扱いは、AFでは他国領土内では活動せず、RDRでは派遣可能(但し、朝鮮半島は別扱い)とかなり異なっており、この辺りはデザイナーの解釈の差と言うことのようだ。
他にも、類似テーマをデザインしたデザイナーならではの気付きが、随所にあって面白い。