k-takahashi's blog

個人雑記用

あから2010勝利への道

 情報処理学会誌の2011年02月号の特集が「あから2010勝利への道」。ざっと読んでみた。コンピュータ将棋一般の技術についてもあるけれど、以下は微妙にそれ以外の部分の感想。


学会50周年イベントとして中島秀之氏らが企画し、2008年1月の理事会で提案、承認となる。2008年6月に将棋連盟との会合を持ったが「いきなり羽生さんではなく、もう少し弱いところから始めて、はやり羽生さんが出ないと勝てないという雰囲気を作りたいというのが米長さんの意向であった」など、将棋連盟の視点からは興業としての側面が強い。お金としては約3億必要(対戦料1億、連盟の取り分1億、運営経費1億)だったが、リーマンショックでスポンサーがふっとんでしまったという苦労もあったようだ。(今回は、結局赤字だったとのこと。これでは長期的な開催が維持できない。)お金はやはり大事ということで。


「清水女流王将対策と序盤戦術」(橋本剛)は、対戦にあたり、過去棋譜分析をどう行って「4手目3三角」という選択に至ったかを解説している。特定の人に対する戦略立案というのは、まだコンピュータの手にはあまる話なんですね。


クラスタサーバを使った合議制システムで、通信途絶やサーバダウンが起きても対戦を続けられるようにするための工夫(合議サーバやプロトコルなど)も色々書かれていた。クラスが物理的に分散しているというのは、私が漠然と考えていたよりも大変な問題だったのだなあ。


カスパロフがディープブルーに負けた後で色々と難癖をつけた問題への配慮もされていて、条件の明確化や情報提供にも気を使っていたんですね。(p.156)