k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究2011年12月号

軍事研究 2011年 12月号 [雑誌]

軍事研究 2011年 12月号 [雑誌]

冒頭は『新防衛大綱にみる潜水艦22隻体制の海上防衛」(小林正男)。
南西諸島付近に6隻、台湾・フィリピン付近に2隻、で計8隻。ローテーションの関係でその3倍の定数が必要なので24隻必要となる。22隻+練習潜水艦2隻の計24隻でこれの計算が合う、という話。
一方で、運用に必要なマンパワー(「そうりゅう」型1隻の乗員が65名。これが6隻分で390名。司令部や訓練に必要な分も合わせると500人以上となる。現状2000名しかいないので、ちょっとやそっとでは確保できない。)が確保できるのかとか、艦齢延長にともなう陳腐化対策とか、課題も多い。


島嶼防衛重視 24年度陸上自衛隊概算要求』(田村尚也)からは、南西方面重視という方針がが受け取れる。新型である10式戦車が北海道ではなく本州の部隊にまず配備されるところにもそれが現れている。

これまでは、新型の国産戦車は、まず教導部隊である富士教導団の戦車教導隊や術科学校である武器学校などに導入され、その次に北海道を担当する北部方面隊の戦車部隊から配備されるのが通例であった。例えば、10式戦車のひとつ前の90式戦車は、戦車教導隊に次いで第7師団隷下の第71戦車連隊に配備が始められている。
この時、第71戦車連隊は90式戦車のさらにひとつ前の74式戦車を装備していたが、同時期に本州以南の戦車部隊の一部は74式戦車のさらにひとつ前の61式戦車を装備していた。つまり、戦車教導隊等を除く「実戦部隊」では北海道の戦車部隊より先に本州以南の戦車部隊に新型の国産戦車が配備されることは、基本的に無かったのである。
しかし、今回「実戦部隊」に初めて配備される10式戦車は、本州の戦車部隊から配備が始められることになる。(pp.44-45)

また、演習についても、

九州・沖縄方面を担当する西部方面隊の方面隊実動演習、北海道の北部方面隊に所属する部隊が西部方面隊区に移動する協同転地演習などが要求されている。
これを見ても、陸自が冷戦時代の「北方重視」から「西方重視」に転換していることは明らかだ。
加えて、アメリカでの米海兵隊との実動演習も要求されている。(p.47)

他にも海自については『潜水艦重視 22DDH2番艦建造』(福好昌治)、空自については『平成24年度概算要求にみる自衛隊の航空戦力』(小林晴彦)、という記事が載っている。


小泉悠氏は『常時即応化、地域戦争に重点』という記事で、今年行われたツェントル2011というロシアの演習のレポートを解説している。

「同盟の盾」や「戦闘協力」における大規模な防空演習は、CSTO諸国内で「アラブの春」型シナリオが発生した場合のNATOの介入(空爆)に備えたものという見方である。
防空演習の立案に際して実際にそのような意図がどこまであったかは別としても、もしCSTO域内で独裁体制に対する内乱が発生すれば、NATOによる限定的な軍事介入も(理論上は)考え得
ることはたしかであろう。(p.72)

という見方は、なるほどと思った。


福島原発で戦う新世代軍事ロボット』(阿部琢磨)は、軍事用ロボットが福島原発事故で使われている状況の解説記事。グローバルホークPackbotTalon、T-Hawk(6月に敷地内に不時着した偵察機がこれ)など。人の投入が難しい環境下で使う、という点で、軍事用と事故対策用は類似点が多かったということなのだろう。


『現地取材 空自F-X候補3機種の工場探訪』(石川潤一)は、BAE,ロッキードボーイング、の3工場の見学ルポ。規模の違う3工場の比較も面白い。



『狙われる日本の軍事技術情報』(黒井文太郎)は、先日の防衛産業をターゲットにしたクラッキング事件の解説。やっぱり中国が、ということのようだ。(4月号の記事を受けたもの)
キューバに対米サイバー戦用の基地を作っているという話まであるそうだ。


『国防にかけるエストニアの英知』(斎木伸生)は、独ソ戦前にソ連に併合され、終戦後はエスニック・クレンジングの被害にあったエストニアについて。そういう歴史を受けて、現在は、自営能力を高めつつ、国際機関への関与を深くする、というフィンランド型の国防戦略をとっている。これは、フィンランドと同じ方針だが、エストニアNATO加盟国で、フィンランドは非加盟国という違いがある。国の大きさとか、想定敵(ロシア)からの距離とかも違うけれど。