k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究 2013年02月号

軍事研究 2013年 02月号 [雑誌]

軍事研究 2013年 02月号 [雑誌]

表紙は、中国のJ-31戦闘機。

中国軍

「中国軍の現代化」(田中三郎)は、中国軍の現状。七大軍区から五大戦区への再編成、合同司令部と陸海空軍部の設置、宇宙軍の創設、など。
五大戦区は、北部戦略区、東部戦略区、南部戦略区、西部戦略区、中部地区の5つ。ポイントは、各戦区が外国を含んでいること。ASEAN地域は南部戦略区に、北朝鮮は北部戦略国、そして、沖縄は東部戦略区に含まれている。尖閣諸島をではなく、沖縄(南西諸島)を中国の領土としている地図なのである。
弾道ミサイル部隊は、宇宙軍に編入というのが、著者の読みのようだ。


「日本の遙か先を行く中国のステルス戦闘機」(竹内修)は、J-20とJ-31の分析記事。まがりなりにも第五世代戦闘機を二機種進空させた意味を見誤らないようにという趣旨。
竹内氏の記事では、J-20はAWACSや空中給油機、地上レーダー施設などを攻撃するための戦闘機、J-31については詳細不明としながらも、低価格機説、艦載機説、輸出用戦闘機説、などをあげている。


巻頭カラーページに先日のDCNS社のSMX-26の模型写真が載っていたが、http://sankei.jp.msn.com/world/news/130120/erp13012010320003-n1.htm には、このSMX-26を中国が狙っているという記事があった。サンケイの記事なんで、本当かどうかはは不明。

日本の先進個人装備

三鷹聡氏の記事。2007年の「ガンダム」で注目された個人用装備だが、検討は進んでいて、ポイントはC4Iというところは同じ。個人装備だけでなく、戦車や無人機なども含めたNW化という方向。
一つ面白い指摘が、「火力の強化」というところにあった。

発射弾数に対する命中率は技術の進歩と反比例して下がってきているという意外なデータがある。
(中略)
携帯火器の自動化と長射程化、他の火器システムの進歩が関係しており、実践では歩兵は小銃をまともに照準もせず、ただやみくもに弾をばら撒くだけ。現代歩兵の小銃は極論すればシンボル的な装備と言い切る論者もいる。火器としての有効性は相対的に低くなったと言わざるをえない。
ゲリコマ対応など戦闘の様相が変化したことで、最新歩兵装備ではこの小銃の能力を再び向上させることが研究されている。つまり目標にちゃんと命中して制圧できる有効な火力を歩兵に再び持たせようとしている。(pp.54-55)

航空自衛隊の電子戦能力

宮脇俊幸氏の記事。まず電子戦についての歴史を概観し、その上で自衛隊がどうだったかを説明している。
1960年代〜80年代が電子妨害への対処訓練、1990年代からは電子妨害と電子戦支援を含むようになり、2010年代からは態勢強化という分類で、この分類は初めて読んだ。当然、こういうのは装備と表裏一体なので、それでなくても装備更新の遅い自衛隊は、なかなか小回りは利かない。
で、最近の態勢強化の一環で、F-15DJ用のエスコート・ジャマーが紹介されていた。従来「周辺国への配慮」のため導入されていなかったけれど、2008年から正式に開発着手。当然「島嶼侵攻事態対処」が想定されている。

8輪駆動装甲車は真に有効か?

黒部明氏の記事。現状分析と装輪式戦闘車両の課題がまとめられている。
課題は、防護性と戦術機動性。防護性については、こんな言葉が引用されている。

戦車は、射撃によって遠距離から目標を攻撃すれば良い。それに対して、兵員輸送車は、脅威に真正面に立ち向かいながら、歩兵部隊を目的地まで送り届けなくてはならない。従って、兵員輸送車は戦車よりも防護レベルを高める必要がある。(p.103)

イスラエルのタル将軍の言葉とのこと。当然、戦車以上の防護力となると装輪式では困難。イラクやアフガンの戦訓のこともある。
戦術機動性については、不整地の踏破性能のことで、これも実戦教訓からということになる。
もちろん、日本にどちらが向いているのかというのは日本の都合で考えれば良いことだが、著者は英国がバイキング装甲車を配備していることを指摘して、装輪車と決めつけない方がよいと書いている。

百里基地整備補給群

石川潤一氏による第7航空団整備補給群の取材レポート。「整備補給群って何をしているの?」について書かれている。
基本的には「基地内で行う範囲で、高度な整備を行う」のが任務となる。(メーカーに送らない分、ということ)
いわゆる職人芸的な世界のようだ。ただ、複数種の機体整備はやはり負担が大きい。

ロシア、軍事情勢2013

小泉悠氏の記事。スキャンダルの解説が中心。
なんといっても、セルジュコフ国防相解任が大きいが、

プーチンはこうした反発を承知の上でセルジュコフに改革を進めさせたわけで、セルジュコフが窮地に陥る度に軍改革への支持を表明して事態の沈静化を図ってきたという経緯がある。したがって、今回のような形でセルジュコフが失脚することは本来ならばあり得ないはずであり、そこには他の要因が働いていたと考えるべきであろう。(p.208)

として、産業界の反発、ファミリーの仁義に反した、FSBとの関係悪化、をあげている。
小泉氏は、後任人事を見る限り軍改革の基本は変わらないようだが、守旧派の巻き返しの可能性は無視できなくなったとしている。

統合失敗 EADS&BAE

木村正人氏の記事。10月に破談で終わった。EADSとBAEの経営統合の解説記事。
長期的には米国勢への対抗が必須のはず。当初はフランスが障害となるとの見立てだったが、実際はドイツ・メルケル首相が国内事情を優先させたことで破談となった。現在では、EADSとの統合に失敗したBAEが米国の大手とくっつく可能性も取りざたされているとか。


ややこしい事情の一環がこんな風に書かれていた。
BAEが持つF-35の技術が独仏に流出することを防ぐため、BAEの米現地法人の独立性は高いのだが、統合すればEADS基準に従ってこの独立性が下がることになる。この辺の米国との調整も大変なようだ。

シリア潜入ルポ

桜木武史氏のレポート。昨年の10月〜11月のもので、自由シリア軍や現地で治療を続ける医師などのインタビューが掲載されている。
シリア第二の都市アレッポ、トルコとの国境に近いハーレム、から。