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ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義

ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義

ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義

  • 作者: ケビン・ワーバック,ダン・ハンター,三ツ松新,渡部典子
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2013/11/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ゲーミフィケーションは最近の流行語だけれど、それをビジネス適用という点からかっちりまとめた一冊。ビジネススクールの教科書がもとだけあって、非常に構成がしっかりしている。
安易に使った場合への警告も書かれているところも良い。
ゲーミフィケーションって使えないかな?」と考えているなら、参考書兼チェックリストとして手元に置いておくことお薦め。

Level.1 ゲーミフィケーションの基本概念

ゲーミフィケーションは有効なビジネス手段だということの紹介。また、本書におけるゲーミフィケーションの定義を

ゲーミフィケーションとは、非ゲーム的文脈でゲーム要素やゲームデザイン技術を用いること
(p.51)

としている。

Level.2 ゲームデザイナーの考え方を学ぶ

ゲームとは、「自発的なもので」「選択に対してフィードバックがある」もの。
ゲーミフィケーションが適用できるかどうか判断するために、以下の4つを考えてみること。

  1. モチベーション:行動を促すことで価値が引き出せるか。(引き出せないならやるべきではない)
  2. 選択肢:対象となるアクティビティは充分に興味深いか(行動者が意味のある選択をできないなら、やるべきではない)
  3. 構造:行動をモデル化できるか(記録や測定、評価ができないものは対象とならない)
  4. 対立:既存の仕組みとぶつからないか

Level.3 なぜゲームが有効なのか

自己決定理論では、欲求は「コンピテンス」「関連性」「自律性」に分けられる。これを組み込まなくてはいけない。個々人によって嗜好は異なる。かれらが「自律」的に行動するには選択肢がなくてはならない(何をするのかについて強制してはならない)。

一方、重要な教訓として

安易に、内発的な基準でモチベーションが湧くかもしれないアクティビティに外発的動機付けを付与してはいけない(p.114)

がある。外的報酬の扱いは充分に注意しなくてはならない。

Level.4 ゲーミフィケーションのツールキット

ポイント、バッジ、リーダーボード(PBL)は、出発点として有効であり、多くのプロジェクトにおいては合理性がある。しかし、それは必須のものではないし、ときに害悪となることさえある。だから、PBLについてはきちんと理解しておかなくてはならない。

ゲーミフィケーションを適用する場合、ダイナミクス(原動力)、メカニクス(プロセス)、コンポーネント(具体的な構成要素)、の3層ピラミッド構造を踏まえなくてはならない。PBLはこのうちのコンポーネントの一つに過ぎない。
(3層の具体例は、pp.145-150 に例示されている)

Level.5 ゲーミフィケーションへの6つのステップ

プレイヤーが面白がりそうなことをブレーンストーミングで挙げて、有効と思われるゲーム要素を選ぶ、というやりかたでは失敗する確率が高い。(p.155)

という警告がまず示される。では、有効な6つのステップとは。

  1. ビジネス目標の定義
  2. 対象行動の具体化、行動測定基準の設定
  3. プレイヤーを細かく具体的に設定する。モチベーションや行動を具体的に記述する
  4. アクティビティサイクルの作成。ミクロ、マクロの両方で行動サイクルを定める
  5. 「これは楽しいか」を確認する
  6. ツールを選ぶ

そして、フィードバックを得て、試行錯誤を続ける。

Level.6 大失敗

注意すべき失敗点について。
何にでもポイントをつける(ポインティフィケーションの罠)のは、報酬偏重・体験無視という失敗パターン。
リーダーボードの悪用(ディズニーの例)。楽しさではなく恐怖を、人々を操作する動機付けとする問題。(最近、こういう実例が紹介されていた。)