k-takahashi's blog

個人雑記用

How Google Works ― 私たちの働き方とマネジメント 〜スマート・クリエイティヴな人々をどう活かすか

How Google Works

How Google Works

「そうだ、そうだ」とうわべばかりマネするか、「Googleの方法なんて、うちで使えるわけないだろ」となるのか、どちらかになりそうだと言うのもごもっともなのだが、本書でGoogleAppleのやりかたをこう評している。

きみがスティーブ・ジョブズ並みの直感と洞察力を持っているなら、ジョブズのやり方を見習えばいい。でもそんな人間は世界に何人もいないんだ。私たちと同じ「その他大勢」のほうに入る人には、私たちのアドバイスが役に立つかもしれないよ。(No.3616)

その上で、Apple流の統制されたクローズドなやりかたが向いているところもある。それはそれで使う、という話をしている。


ならば、我々もGoogleのやり方の中から使えるところを持ってくることができるかもしれない。という読み方をすれば良いのだろう。GoogleAppleでないのと同様、我々はGoogleではないのだから。


本書の中で何度も出てくるのが「スマート・クリエイティヴ」という言葉。一言で言えば、飛び抜けて優秀で実行力のある人ということで、そういう人達を最大限活用することが重要だということ。
それだけなら、「そんな人、ほとんどいないよ」で終わるのだが、本書では、そういう人達を見つけ出し、活用し、育てる話が色々と出てくる。
Googleの有名な20%ルール。素晴らしいプロダクトを生み出すためと説明されることが多いが、本書ではこんな風に書かれている。

たいていの20%プロジェクトでは、日常業務では使わないスキルを学び、普段は一緒に仕事をしない同僚と協力する。プロジェクトから目を見はるようなイノベーションが生まれることは滅多にないが、たずさわったスマート・クリエイティヴは必ず以前より優秀になる。ウルス・ヘルツルがよく言うように、20%ルールほど効果的な社員教育プログラムはないのではないか。(No.4075)

そして、20%ルールの成果で報酬が得られることはないのだそうだ。その理由も書かれている。


あるいはGoogleの豪華な施設。実は、オフィスはいわゆる「一流企業」よりもむしろ狭いのだそうだ。狭いところに集めることで交流を促すことが大事と考えているから。
一方で、じっくり考えたり気分転換したりすることは大事で、そのための投資は厭わない。といった調子。


投資と言えば次の部分もね。私の勤務先での実行は難しそうだが。

グーグルはコンピュータ科学の会社なので、我が社のスマート・クリエイティヴが最も必要とするのはコンピューティング能力だ。だから私たちは、エンジニアが世界で最も強力なデータセンターとグーグルのソフトウェア・プラットフォームをすべて自由に使えるようにしている。(No.799)

他に面白かったところを幾つか引用。

スマート・クリエイティヴの多く(私たちの経験ではほぼ全員)が対立を避ける傾向があり、「ノー」と言うのが苦手だ。(No.2242)

議論を打ち切り、出席者から100%支持されているわけではない結論を出すときに、こう言うのだ。「どちらも正しい」(No.2877)

こういう苦労は、私の勤務先でもGoogleでも変わらないようだ。

収益の八割を稼ぐ事業に八割の時間をかけよ。一見簡単そうだが、実行するのはかなり難しい。(No.2973)

ついつい面白そうなことにばかり手をかけがちだた、ビジネスの足腰はきちんと守れという話。

二〇回言っても周囲に伝わらないことがあるなら、それはコミュニケーションの方法ではなくテーマに問題がある。(No.3258)

「何度も言ってみろ」というのがこの前にある。同じ事を20回言うのは実はかなり大変だ、ということも書かれている。そして、20回で切り替えるという切り方はいかにもGoogleっぽい。

プロダクトデザインから、その会社の組織図が浮かび上がるようではいけない。(No.965)

グーグルでユーザと言えば、私たちのプロダクトを使う人々を指す。一方、顧客とはグーグルの広告枠を買ってくれたり、技術のライセンス契約を結んでくれる企業だ。両者の利益が対立することはめったにないが、対立が起きた場合、グーグルは常にユーザの側にたつ。業界を問わず、どんな企業もそうするべきだ。(No.3816)

これ、私の前の職場は両方バツだったな。

中国問題

クラッキング攻撃を受けたこと、経営と理念の衝突、Google社内での議論、などについて書かれている。
ただ、政治的な価値判断というよりは、困難で意見が対立している場合の経営判断がどのような手順で行われるかというところに焦点が当たっている。
まだまだ北京の権勢は大きく、検閲は強力に巧妙になっている。