k-takahashi's blog

個人雑記用

世界ボーイズラブ大全 〜エピソードいろいろ

ホモセクシャルの歴史は人類の歴史と同じくらい古い。古代ギリシャでは少年愛は高貴なものとしてとらえられ、愛し合う男性同士で構成された軍隊も存在していた。退廃的なローマ社会では美少年を奴隷市場で売買するのが盛んになり、裕福な貴族たちは自宅用に愛らしい少年奴隷を買い、性的快楽の道具とした、、、。美少年同士の愛、美少年ペット、磨き上げた肉体、倒錯愛。古代から現代まで、西洋から日本まで。少年愛、同性愛、ボーイズラブに関するエピソードが満載。

http://www.amazon.co.jp/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%83%A9%E3%83%96%E5%A4%A7%E5%85%A8%E2%80%95%E3%80%8C%E8%80%BD%E7%BE%8E%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%80%8C%E5%B0%91%E5%B9%B4%E6%84%9B%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%80%8C%E6%82%A6%E6%A5%BD%E3%80%8D%E3%81%AE%E7%BD%A0-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E6%A1%90%E7%94%9F-%E6%93%8D/dp/4167838141

ということで、体系的なというようりは興味深いエピソード集といった感じ。創作系の変遷とか、戦後日本の「やおい」とか「耽美」とか言われている辺りとかをまとめてものではなく、歴史的なエピソードが中心。現代につながるあたりの話は、別の本を探さないといけないのでしょう。
タイトルは「ボーイズラブ」だけれど、別に少年愛に限定したものではなく、男性同性愛全般がターゲット。


古代の同性愛(古代ギリシャとか)、中世から近世の不寛容時代(テンプル騎士団事件とか、ルネサンス期の弾圧強化とか)、近代西洋のエピソードもたくさん、それに加えて日本のエピソードも。
20世紀の偉大な芸術家に同性愛者が多く、という話も出てくるのだが、正直なところ名前を知っているだけくらいの人達のエピソードはあまり面白いとも思えず、話題造り的に使ってたんだろうなというものもチラホラ目立つなとも感じた。
単純に面白いのはやはり日本のエピソードで、ヤマトタケル大伴家持仁和寺覚性、増誉、梅若丸、白河院西行藤原頼長平敦盛源義経世阿弥森蘭丸大内義隆武田信玄上杉謙信伊達政宗不破万作、品川左門、徳川家光徳川綱吉、とまあ、並ぶ並ぶ。


基本的にはエピソード集なので、幾つか引用。


世界史の部分で笑ったのが以下の部分。プロシアのフリードリヒ大王のエピソード紹介に合わせて書かれているのだが、

フリードリヒはときには気に入りの士官の膝枕で仮眠をとったり、負傷した一兵卒をみるとみずからのハンカチを差し出すなど、階層を越えてある種の男達に対しては慇懃だった。
それに対して女嫌いで女性に対してはきわめて厳しく、例えば当時、ロシアはエリザベータ女帝、オーストリアマリア・テレジア大公、フランスは国王の寵姫ポンパドゥール公爵夫人など、強国三国の事実上の支配者は女性達だった
(No.950)

女性に国を脅かされていたのでは、女性嫌いになるのも無理はないか、と変に納得。

生来の同性愛者が、母のような年頃の女性に思慕を寄せる傾向があるのはよく言われることだ。
(No.1776)

これは、マルセル・プルーストのエピソードの解説に出てくる。


ヤマトタケルが女装して熊襲を討つエピソードもこんな解釈になる。

もしかしたらクマソは美少年好きだったのだろうか。そもそも女装したタケルを最初にみたときから童女ならぬ美少年だと見抜いて、彼を寝所に引き入れたのだろうか? そう考えたくもなってしまう。
(No.3344)


そうかと思うと、森蘭丸については

絶世の美少年として描かれるが、事実はとくに美少年だったという記録はほとんどなく、信長のお手がついたという記録も特にない。
(No.3812)

とあっさり。


内容の正確性はよく分からないのだけれど、読んでいて面白い。