k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究 2015年11月号

軍事研究 2015年 11 月号 [雑誌]

軍事研究 2015年 11 月号 [雑誌]

空自F-35の調達は四二機に留めよ!(吉岡秀之)

F-35はFMS(米政府が有償で行う軍事援助)で調達される。その国内への影響を解説する記事。
FMSに国内企業が参加する場合は、米国政府〜米企業〜国内企業という流れになり、通常の直接製造契約請負契約よりも見通しが悪くなる。そのため、国内企業にとっては参加し辛いことになる。(吉岡氏は、F-35の評価で「経費」「航法支援」が高評価だったことに対して、実績の無いALGS経費をどうやって評価したのか等と疑問を呈している)。また、技術的に高度な部分に触れにくいことも問題。

で、採算の不透明性から国内企業離脱、国内体制の危機ということを懸念し、「将来戦闘機事業の研究費増加」「装備品輸出促進」「プライム企業再編」という3つの策を提案している。

予算要求関連

8月に防衛省の来年度概算要求が公開された。その解説記事が『南西諸島防衛とグレーゾーン事態対応(芦川淳)』、『海上自衛隊の二八年度計画(福好昌治)』、『空自/海自の航空戦力整備・戦闘機部隊の大移動(小林春彦)』の3本。


芦川氏は『V-22の一括契約を見て一気に進めすぎではないかとも感じたが』『平成二九年度に発足予定の陸上総隊の創設に合わせて、即応機動連隊の整備を一気に進めるという作戦も考えられる』(p.46)とし、29年度予算の注目点として指摘している。
また、空自のJADGE、陸自のADCCSなどをまとめる研究に7億円計上していることにも着目。
他に、長期洋上展開の時の支援のための機体が「機種選定中」となっているが、それが異例であること、どうしてもその種の機体が欲しいこと、の現れと分析している。


福好氏はイージス整備を中心に解説。27DDGと28DDGにNIFC-CAが搭載されるかどうかは不明(NIFC-CAが搭載されれば、両艦は弾道ミサイル巡航ミサイルの両方に対応できることになる)。SM-3ブロックIIA(今年6月に試射成功)の準備も予算化された。
一方、潜水艦の人員増強が含まれていない問題を指摘(艦齢延伸予算は計上されている)。また、水陸両用戦に必要な艦船(おおすみ以上の能力を持つ多機能艦艇が必要になるはず)の予算もない。


小林氏はSH-60K、UH-60Jのまとめ買い、戦闘機部隊の改編などを説明。
一方で、F-15の近代化改修の予算が計上されていない(従って、F-2のみが対象)。

米軍の次世代空対地ミサイル 第2回(石川潤一)

ステルス戦闘機の機内格納型対地ミサイルについての記事。現状のF-35ではJAMとAMRAAMしか無いが、GBU-53/B SDB IIの他、AGM-154 JSOW(滑空爆弾)が開発中。ノルウェーのコングスベルク社が開発したJSM(対艦ミサイル)、トルコのSOM-Jを紹介している。
ロシアはKh-59Mk2を始め、他の国もウェポンベイ内蔵型ミサイルは開発している。もっとも石川氏はネットイネーブルが必須であとは想定ミッション次第で変わると書いている。

世界の原子力ミサイル巡洋艦(1)(大塚好古)

米海軍の原子力推進水上艦の歴史解説。
原子力巡洋艦ロングビーチは1961年竣工。桁違いの航続力を持ち、広域防空能力・索敵・砲撃など万能艦としてもまとまっており、「高いがそれだけの価値あり」と考えられていたそうだ。
駆逐艦の方には、『太平洋戦争時に駆逐艦の燃料補給に苦しめられた経験』(p.110)とあったのが興味深い。
あとは、レーダーに必要な膨大な電力への対応というのも原子力船の優位点だったようだ。

空の防人回想録(19)(鈴木昭雄)

鈴木氏が北部航空方面隊司令官に就任した昭和61年頃の話。
最初の日米共同統合実働演習では、三自衛隊の時系列のズレへの対応、日米共同作戦計画とのズレ、政治と自衛隊の動きのズレ、など大変だった様子が分かる。
また、昭和61年の福岡事件(マスコミの狙うツボにはまらないように、という説得があったそうで)、62年のTu-16領空侵犯事件(警告射撃を無視された問題)にも触れられている。

ロシアの国際海洋防衛展示会2015(多田智彦)

7月の国際海洋防衛展示会IMDS2015のレポートの後半。今号は装備品の現状、開発機種の動向など。
もともとソ連海軍は多種のレーダーがあったが、その更新が色々。ソ連時代の装備からの更新が進んでいるということになる。

中国国務院、国防白書「中国の軍事戦略」(田中三郎)

中国政府が5月に公表した国防白書の解説。
『陸軍を重んじ海軍を軽んじる伝統的考えを打ち破る』と明記したことが重要で、陸軍の抵抗を抑えて海軍の拡充をさらに続けることが少なくとも政府レベルではコンセンサスになったことを意味している。
実際、2013年だけで軍艦の就役が27隻(2014年は更に多い)、支援艦の数も数十隻に達しトン数も大きい。
田中氏は、中国海軍のターゲットはインド洋であり、それは西側の勢力が弱いからだとしている。そして、インド洋(あるいは西太平洋)を狙う足場としての南シナ海の実効支配が「最終段階」に入ったとしている。

用兵思想を知らずして戦術を語るべからず(9)(田村尚也)

今回は第一次大戦付近の話。国家総力戦。
シュリーフェンプランの話題では、『近年の研究では、政治的な状況を充分に考慮した上で』という見方もあり、よく言及される「小モルトケ」による「改悪」についても、最近の研究では異論が出ており、右翼兵力は減らされていないことなどが分かってきているそうだ。
第一次大戦直前は各国とも『先に動員を開始した方が有利、もっと言えば戦争を先に始めた方が有利』(p.235)と考えており、やはり長期戦とは考えていなかった。それが消耗戦になっていったのが第一次大戦