k-takahashi's blog

個人雑記用

ニュートン 2015年12月号

Newton(ニュートン) 2015年 12 月号 [雑誌]

Newton(ニュートン) 2015年 12 月号 [雑誌]

表紙写真にあるように梶田先生、大村先生のノーベル賞受賞研究の解説記事が緊急特集。
研究・開発の経緯(大村先生なら、発見、副作用対策、働きの解明、実用。梶田先生なら測定結果に「におい」を感じ、仮説を立て、観測を継続し、実証する)が分かりやすくまとめられている。

記事中に「観測される太陽ニュートリノの数が、予測の3分の1しかない」(p.32)というのがあったが、クラークの『遙かなる地球の歌』がその設定を使っていたな、と思い出しググってみたら、

作中では、太陽から飛来するニュートリノの数が理論値よりも少ないことを発端に、太陽内部で異常が起きていることが判明します。太陽がノヴァ化する原因が表面に現れるまでには時間がかかりますが、ニュートリノの観測でそれを事前に察知したということですね。
 実はこの「理論値よりも少ない」という部分、フィクションではありません。太陽ニュートリノ欠損問題と呼ばれ、長らく物理学者の方々を悩ませてきた謎です。現在ではニュートリノ振動によるものと決着したようですが、かつては実際に「太陽内部で核融合反応が止まっているのではないか?」という説も存在したようです。

遙かなる地球の歌: Manuke Station : SF Review

というのがあった。

酵素

特集は「酵素」。『酵素とは、化学反応を効率よく正確に起こすことができるタンパク質』(p.37)という定義の説明に始まり、消化・殺菌・解毒といった作用の説明、酵素の作られ方・働き方(なぜ消化酵素で人体は分解されないのか。酵素の働く対象とPHで巧みにコントロールしている)、酵素の連係プレイなど分かりやすい説明。


QAのところに、『お酒が弱くても、飲み続けるとお酒に強くなるというのは本当か』というのが出てくる。
これに対して、上述の説明を受けて、アセトアルデヒド分解酵素は遺伝的に決まるのでこれを鍛えることはできない、毒素分解酵素(MEOS)は過剰な飲酒を起こすと増加するが、これは肝臓に大きな負担をかける、という説明をしている。飲めない人間に向かって「鍛えてやる」というのが人殺しだというのが分かる。

色覚

桿体・錐体の説明、情報処理の仕組み、色覚異常の原因、などの解説。上述の酵素の記事を読んでおくと、光検知の仕組みが分かりやすい。

写真

『アストロノミー・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー』の受賞作の紹介(天文写真家の藤井旭氏の解説付き。夜光雲の写真はCGにしか見えない美しさ)。
http://www.rmg.co.uk/sites/default/files/s22_mr_1200.jpg


冥王星の絶景』は、先月NASAが新規公開した写真の紹介と解説。


『空を舞う生き物の大群集』はムクドリ、オオカバマダラ、オオコウモリ、ホオグロムナジロヒメウ、フラミンゴ、ペリカンなどの集合写真。フラミンゴやペリカンは鳥ではなく植物か何かに見える。


『南米の植物たち』は、写真家木原浩氏による南米植物写真。巨大な草、奇妙な形の花など。

短信

エンケラドスの地表の下の「海」の件。(p.7) 観測結果からエンケラドスの時点がぶれていることを発見。その理由として液体の海があれば説明できるという流れ。その観測結果を得るのに7年分のデータが必要だった。


電気で生きる生物。ウェブでも話題になった理研中村博士の発表の解説。
『太古から海底に存在したチムニーが電池なら、それをエネルギー源として利用する生物がいるに違いない』『硫黄や水素などの物質は、チムニーの周辺でも濃度変化が大きく供給が不安定だが、電気はチムニーから比較的安定的に供給される』というあたりは、なるほどと。