k-takahashi's blog

個人雑記用

少年の名はジルベール

 

少年の名はジルベール

少年の名はジルベール

  • 作者:竹宮 惠子
  • 発売日: 2016/01/27
  • メディア: 単行本
 

 竹宮恵子先生のエッセイ。『風と木の詩』のできるまで、といったところなのだが、友人の増山さんのやりとりとかを通じて結構理屈っぽい話が多いところが興味深い。

 

なので、1ヶ月半のヨーロッパ旅行(1972年の秋に20歳そこそこの娘さん4人で、である。たいしたものだ)での取材回りとか、萩尾望都先生の技法の分析とか面白く読めるし、なにより山場である『ファラオの墓』創作回りが面白い。

「読者投票で1位になったら『風と木の詩』を掲載する」という言質を得て、完全にスイッチの切り替わった竹宮先生が、徹底的に読者に楽しんでもらうことを考えて色々と工夫していく様子が描かれている。ストーリーの構成、キャラクター、資料、アドバイザの使い方などをやって、この経験が教える側に回ったときに、なぜそれが重要なのかというモチベーションに説得力を与えているのだろう。

私の視点からは竹宮先生の代表作はもちろん『地球へ』なのだが、本書を読んでいると、「風と木の詩という少女漫画を描く」という目的がなかったら、少年漫画書いて成功してたのかもなとも思った。(一方、この目的がなかったらスランプ脱出はできなかったのかもしれない)。
あと、『地球へ』と『風と木の詩』を同時並行したのって、記載ないけど意図的にやったんじゃないかなあ。

 

以下、ちょっとメモ的エピソード。

大泉に萩尾望都先生と同居すると伝えたときの編集(山本順也)氏の言葉

トキワ荘だってなあ、楽しいことばかりじゃなくてきっといろいろあったはずなんだよ。それにあれは家じゃなくて、アパートなの。個人の領域は最低限あるじゃないか。やらなくたってわかるよ。マンガ家ってのはなあ、そんなふうにみんなで寄り添ってやってくような生き物じゃないんだよ。おまえもマンガ家になったんだからそのくらいわかるだろう?絶対にうまいくいかないよ(p.48)

トキワ荘的なものに憧れてトラブル起こした人達多かったんだろう、というのが伺える。

 

なお、読んでいていつの間にか、竹宮先生のイメージがクリスチーネ・剛田先生、増山法恵さんが映像研の金森さんになってしまっていた。