k-takahashi's blog

個人雑記用

銀河核へ

 

銀河核へ 上 (創元SF文庫)
 
銀河核へ 下 (創元SF文庫)
 

 ベッキー・チェンバーズのデビュー作。発表時には、クラウドファンディングで資金集めをしたことでも話題になった。で、個人出版からメジャーデビューとなり、各賞候補にもなった。

地球を失った人類は銀河共同体に加盟を許され、弱小種族ながら繁栄を享受していた。宇宙船“ウェイフェアラー”は超光速航行用の“トンネル”建造船。多種族混成クルーのこの中古船に突如、「銀河系中心部への新航路を拓く」という大仕事が舞い込んだ。かくして彼らは長く賑やかな航海に乗り出す…。

 という内容で、主人公のローズマリーは、事務員としてこのウェイフェアラー号に新規採用された人物という設定。彼女の他に6人のクルーがいて、3人は文化圏の異なる人類種族、3人は異種族、プラス人格AIのラヴィーという、スタートレック的構成。

上記の「新航路」というのは、トンネル(ジャンプゲート)の建設のことで、1年かけて銀河核中心部のトレミ人の惑星に移動し、そこから既知の領域にトンネルを作ることになる。移動中の様々なトラブルと異文化遭遇、最後に大きなトラブルがあり、といった構成。

 

著者が書きたかった、マイノリティーや異文化受容の話、身内の不祥事を自分はどこまで引き受ける必要があるのかの問題(社会的には色々嫌がらせをされる)などを色々と放り込んであって、人種・階層の差を異星人との差に託すのはそれこそスタトレ以来の伝統でそれはそれで面白いのだけれど、なんかテレビシリーズのフォーマットにそういったアイディアを入れ込んだような印象を受けた。全体としての構成はあまりよいとは思えず、伏線の使い方もストレートすぎる感じなので、新人賞はともかく普通の賞の候補と聞くとちょっと疑問。(ここ数年、欧米のSF賞で受けるのがこのタイプだというのは知っている。その辺の都合は、訳者後書きを見ると分かる。共鳴だの、リアルな問題だのという辺りね。)

 

向こうではシリーズものとして好調のようなので、シリーズ物として面白くなっていて世界描写が深まっているのかもしれないが、キャラクター人気なのだとすると翻訳の続きは難しいかなあ。