そもそも雑談力って何? 必要なの?というところから始まり、最近の研究や実証を紹介している一冊。
AIと協調していくためには、AIが信頼を得る必要がある。雑談をすること、雑談をできることがその信頼を得るのに不可欠であるというところがベースになる。
AIは社会の一員として、人間とうまくやっていくために雑談を始めたのです。(No.134)
人間の一番近いところに入り込んでいくためには雑談が必要なのです。(No.262)
信頼の基盤となる営みが雑談なのです。(No.375)
本書では「タスクAI」と「雑談AI」という分類を最初しているが、レベルが上がってくると重なってくる。タスクを達成するためには雑談が(雑談できる能力が)必要ということなのだろう。
本編は雑談をうまく実装するには何が必要かという分析を色々している。「雑談をうまくやるためには猫好きのためのコンテンツを用意しておく必要がある」という辺りは愉快なエピソード。この辺は技術・事例紹介なのだが、それが周辺に派生してきているのが面白い。
筆者は、東大入試で合格点を取ろうという「東大ロボくん」に参加(英語)していたのだが、東大ロボくんの新井リーダーが「教科書が読めない子供」という課題を明らかにしたのと似た感じ。
- 「信頼」を構築するための人間関係の進め方。雑談で何を話すのか
- 雑談を成り立たせるために必要な設定情報
- ボケと適切な雑談の進め方の技術の関係
- 外国語教育(能力評価)とタスク会話
理論、技術、実装上の課題、トライアルといった話がことごとく、周辺の話に繋がっていく。
終盤に、コロナの影響の話題も出てくる。雑談を分類した知見のうえで、コロナ禍での雑談の減少による影響、雑談枠を作ろうという試みとその限界、などが語られる。
Web会議を中心としたコミュニケーションでは、雑談が担ってきた人間関係構築がかなり脅かされていると言える。(No.2376)