k-takahashi's blog

個人雑記用

三国同盟 根拠なき確信と無責任の果てに

 

山本五十六が「対米戦必敗」を念頭に大反対した日独伊三国同盟だが、実際には締結に至っている。後知恵ではなく当時の判断としてそれは妥当だったのかというと、とてもそうは思えない。なのになぜ、という辺りの複雑怪奇な流れを整理分析解説している一冊。

副題「根拠なき確信」「無責任の果て」というところで暗い雰囲気になるが、実際そういうもので、

心の奥底では、大日本帝国が滅びるなどありえないとの根拠のない自信を抱き、ゆえに、国益よりも自らの属する組織の利益、はなはだしい場合には、おのが功名心を優先したのではないだろうか(No.54)

などと冒頭から書かれている。実際、そういう意識で行動したとしか思えない人物も登場する。

ただ、相応に複雑な状況だったのも事実で、英仏の動き、ソ連の動きも色々複雑(よく指摘されるチェンバレンにしても、単に愚かと切って捨てることはできない。)。なにしろ日独伊軍事同盟へのソ連の参加というのも根拠のない話ではなかったりする。有名なゾルゲ事件(南進による日米開戦誘導)が成り立つのもそれなりの背景はある。もちろん、その根本にあるヒトラー周りの情報収集について、大島浩という人物を中心に据えた辺りがマズいのではあるが。

 

日米開戦に至る流れについては何冊か読んでいるが、「どっかで止められなかったものか」と架空歴史を思い浮かべながら読むことになる。そして「ファンブルがあったというよりは、クリティカルが出なかったんだなあ」という似たような感想になる。その程度は様々だが。
本書でも最後のチャンスとして1939年4月の「日米諒解案」が登場するが、潰れてしまう。そして、7月の南部仏印進駐でアウト、と。で、この日米諒解案を潰した松岡外相が南部仏印進駐に反対していたりとか、やっぱりわけ分からないよね。