創元社が毎年出しているSFアンソロジー。創元のSF賞(創元SF短編賞)の受賞作と合わせてのもの。
今回は、受賞作2本プラス6作品が掲載されている。
「未明のシンビオシス」(小川一水)は、家族のお話。震災で家族を失った、失うことが家族的な繋がりになるか、といった辺りなのだが、ラストはやや腑に落ちず。
「いつか明ける夜を」(川野芽生)は、光を忌む世界で光を恐れぬ聖なる馬が生まれの卑しい者を騎り手に選んだ、その理由と使命が、みたいな話。光(視覚)を恐れる世界の描写が面白い
「1ヘクタールのフェイク・ファー」(宮内悠介)は、気がついたらブエノスアイレスにいたという出だし。ドタバタが楽しい。
「ときときチャンネル#2【時間飼ってみた】」(宮澤伊織)は、マッドサイエンティストが時間を飼っている、というのをYouTuberが実況する話。視聴者からの突っ込みと登場人物二人の掛け合いというのは、語り口として便利なんだな。
「ラムディアンズ・キューブ」(小田雅久仁)は、サバイバル脱出を強いられる超常現象に巻き込まれ、その背景(理由)の片鱗に触れつつという話。「ほんとうの旅」(高山羽根子)は異常に混雑している寝台列車での、紀行文の真偽についての話。
受賞作は、「神の豚」(溝渕久美子)と「射手座の香る夏」(松樹凛)。