k-takahashi's blog

個人雑記用

ポロック生命体

 

 midjournyとかのお絵かきAIが話題な昨今だが、表題作の「ポロック生命体」は、画家の光谷一郎、作家の上田猛の新作を作るAIが登場する。AIが芸術を生み出せるのかというトピックではあるのだが、本作では当人の作品とAIの作品との間を意図的にグレーに設定することで問題を浮かび上がらせるようになっている。その上で、一つの解釈を見せている。
我々は、将棋・囲碁でAIが人間を凌駕する現場を見てきており、それも先読みの早さと正確さを武器に勝負を制したというだけでなく、盤面評価や新戦術開発という点でも上を行ったことを既に認めている。その上で考えると、AIが絵画や小説で人間を上回った時の世間の反応についての本書の描写は、やや違和感を感じる。

 

「負ける」は、AIに上手く負けさせる方法を検討していったらという話題。AIが格好悪い負け方をしてしまったので上手く負けさせようとしたが、研究中にAIは圧倒的に人間より強くなってしまった。ではその研究は無駄だったのかというと、という話。

 

「144C」は、編集者としてのAIとの関わり方の話題。AIと作家の共作があたりまえになったとき、編集者は何をするのか。ブレードランナーのフォークト=カンプフ検査を思わせるやりとりの場面が面白い。

 

きみに読む物語」では、小説や個人を分析してSQという指数を導くことができ、この指数が近いとその個人はその小説をもっとも的確に楽しむことができる、ということが分かったら、という設定。ARの話題が終盤にでてくるのは、小説の上にARを被せてパーソナライズする手法を暗示しているのだろう。