k-takahashi's blog

個人雑記用

戦争は許されるか

 

副題の「武力行使のルール」の方が内容説明としては適切。丁寧に解説してくれているので興味があるなら読むとよい。

 

現在の国際法では戦争は許されない。国連憲章武力行使も禁止している(2条4項)。但し、軍事力行使には一部許されるものはある。許される軍事力の行使とは、安保理決議に基づく措置、個別国家の自衛権の行使、敵国条項

安保理決議は機能しない(ロシアや中国が侵略することを考えれば自明)し、敵国条項は著者によれば死文化している。(ただ、中露が日本、ドイツ、フィンランドなどを侵略するときには敵国条項を持ち出すんじゃないの?とは思う。)

 

自衛権国連憲章51条に基づくもので、現在はこれを持ち出すのが基本。国連憲章51条に基づくと主張するには要件があり、「武力攻撃の発生」「安保理への報告」「必要性と均衡性」を満たさなくてはならない。また、集団的自衛権の場合は更に要件が増え、「武力攻撃を受けた被害国がその旨を宣言し」「被害国が援助を要請」しなくてはならない。
事実、ロシアもウクライナ侵略を正当化するのに集団自衛権を持ち出しているし、幾つかの国はこれを支持・黙認している。ただし、人民共和国が「被害国」だと主張しているのは無理(人民共和国設立自体が主権侵害でそもそも国家として認められない)で、必要性と均衡性も満たさない、というので、主張自体は法的には認められないということになる。
中国が台湾は国ではないと騒ぎ続けているのは、台湾が国だともろにこの辺に引っかかるからだろう。中露が国際秩序を守る気が無いのは明らかだが、それでも国連憲章をおおっぴらに踏みにじることはできない、と言う程度には国連憲章は重いわけね。

他にグレーゾーンの軍事力行使として、在外自国民救出、人道的干渉、PKOが解説されている。行動した国の間でも主張が分かれているので、この辺は当分グレー扱いだろう。