k-takahashi's blog

個人雑記用

赤い手は滅びのしるし

赤い手は滅びのしるし (ダンジョンズ&ドラゴンズ冒険シナリオシリーズ)

赤い手は滅びのしるし (ダンジョンズ&ドラゴンズ冒険シナリオシリーズ)

 基本的にD&Dシャドウランには近寄らないようにしているのですが、それでも耳に入ってくる情報というのはあるわけです。で、数千のオークによる侵攻という大事件にからむというシナリオで、しかもできがなかなかよいと聞いたので買ってみました。
 ネタバレになりますが、http://www.wizards.com/default.asp?x=dnd/ag/20060208a のイラストでもどうぞ、雰囲気出てます。


 読んでみたのですが、非常に骨太なキャンペーンシナリオ&設定集になっていました。いわゆるセカイ系的なアプローチを含めて、FEAR系の軽く遊べるシナリオも良いですが、本格派の迫力・説得力というのはやはり凄みがあります。舞台となる地域の様々な設定や豊富かつ適切に設定されたNPC群は、想定される大きな問題に対するNPCの行動方針の記述とあいまって、世界に深みを与えています。
 そして、多くのイベントの結果はPCの行動次第であり、それらの結果が積み重なって戦役全体の結果に影響するようにできています。戦争のタイムテーブルは基本的に決められていますが、イベントの結果次第で若干の変化を起こします。敵の強力なNPCは戦争全体への関心が第一であるため、逃げ出したPCを深追いすることはありませんが、戦いに敗れたPCが捕虜になった場合の扱いも記述されています。よってPCは戦略的見地から行動の優先度をつけ、必要と判断したら適宜撤退の決断をすることが求められるのです。PCがパーティ立て直しのため時間を費やせば、対応できるイベントの数が減り、それは戦役全体の結果に影響するのです。最終的には、叙事詩的な山場となる第4章の戦闘の結果すらPC次第で変わるのです。


 という大がかりなシナリオにもかかわらず、適切なアドバイスにより様々な変化への対応策は示されています。RPGのシナリオは結構読んでいますが、本書はかなりマスターにとって親切であって、結果の変化のバリエーションが豊富であるにも関わらず、私が読んだキャンペーンシナリオの中では指折りに親切な部類に入ると思います。


 こういうシナリオが日本語で読めるのは実にありがたいです。感謝、感謝 >HJ社、翻訳者御一同様


 D&Dのキャンペーンシナリオを読んだのは久しぶりなのですが、最近は、危険な相手との遭遇をうまく戦闘無しでクリアーすると「脅威度○○の遭遇を克服したものとみなして経験点を与える」となっていて、「戦闘を旨く避けると経験点が入らない」という昔指摘されていた問題を解消しているんですね。


 対応PCは5〜10レベルなので、いわゆる「ファイヤーボール・レベル」です。(D&Dの戦闘は、ファイヤーボールの登場前後で戦術が大きく変わる。)戦闘バランスも含めた調整は容易ではないと思いますが、D&Dどっぷりという設定にはなっていないので、ソードワールドへの移植も不可能ではないでしょう。が、素直にD&Dで遊ぶ方がいいでしょうね。たぶん、この品質のシナリオが結構あるはずですから。