k-takahashi's blog

個人雑記用

映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと 〜何をしておかなくてはならないかのまとめ

映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術

映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術

私は別に映画脚本を書きたいわけではない(そもそも映画自体、年に数本しか見なくなった)が、岩崎啓眞氏が

もう目から鱗が1000枚ぐらい飛び出してしまう、実に明快にシナリオの作り方を段階を追って説明してくれる本だった。

シナリオの教科書::Colorful Pieces of Game

これこそ、シナリオやゲームデザインに興味がある人は絶対に読んでおくべき本だ、と断言して憚らない本なのだ。

シナリオの教科書::Colorful Pieces of Game

と絶賛していたので、GWを幸い読んでみることにした。
中身は、岩崎氏が上記エントリーで書いてあるとおりで、ロジカルで分かりやすく、実用的。
これは小説でも同じだけれど、「常識的なフォーマットを守る」「とにかく完成させる」ということは非常に大事。できはともかく本書の指示に従えば完成にたどり着ける可能性は飛躍的に高くなるだろう。
シド・フィールドは、才能があるのにうまく書けなかった例を本書内でも紹介しているが、そういう悲劇を避けることができる。完成していない脚本(小説)ではその先に進めないのだから。


また、シナリオを読む、物語の構成を考える、というためにもこういう基本型の知識は有用であって、これも岩崎氏のご指摘通り。
お薦めです。

具体的な話

本書の一番大事な部分は岩崎氏のエントリーに譲るとして、面白いと思ったところを幾つか。

なぜではなく、なに

憶えておいてほしい。あなたは、登場人物そのものではない。名前も違えば、シチュエーションも違うし、生まれた日も同じではない。自分自身をモデルにしようとしても、うまくはいかないだろう。
書くと言うことは自分自身に問いかけて、答えを待つということなのである。その問いかけも、「なぜ」ではなく「なにが」で始めなければならない。「なにが」で始まる問いかけには答えは一つしか無い。しかし、「なぜ」という問いかけには、多くの違う答えがあるのだ。そして、それらが全て正しいこともあるのだ。だから、「なにが」を問いかけてみよう。「なにが」その人物をそのように反応させたのか?(なぜ、その人物がそうしたのか、ではない) このシーンの目的は「何か?」(p.55)

落とし穴の一つなのだろう。

脚本を始めるためには、終わり方を知ろう

多くの人が「脚本を書き始める前に、脚本の結末を知る必要がある」ということを信じていない。
(中略)
先に断っておこう。そのようにうまくはいかないのである。少なくとも脚本をかくことにおいては、そうはいかない。小説、舞台の脚本においてはうまくいくかもしれない。しかし映画脚本ではそうはいかない、なぜなら、110ページそこらで、ストーリーを語らなければならないからだ。自分がやりたいような方法でストーリーを伝えるには、ページ数が短すぎるのだ。(p.105)

これも、「書き上がらない」という落とし穴を避けるためのアドバイスだと思う。

同様に、

書き始める前に、考えるべき四つのことがある。
1.エンディング
2.オープニング
3.プロットポイント1
4.プロットポイント2
この四つである。しかもこの順番である。(p.116)

というアドバイスもしている。この4つはとにかく大事で、本書内に繰り返し登場する。


また、シド・フィールドは

次に映画を見るときには、第一幕と第二幕の最後のプロットポイントを見極められるか、練習してみると良いだろう。どんな映画でもプロットポイントはある。それを見つけられるかどうかだ。(p.177)

とも書いている。これは、映画の見方、楽しみ方の拡大と考えることもできるだろう。

人物の本質はアクションだ

ドラマは葛藤だ。葛藤なしには、アクションは起こらない。アクションがなければ、人物を描けない。人物なしにはストーリーは生まれない。ストーリーがなければ、脚本は存在しない。
人物の本質はアクションだ。アクションが人物そのものだ。映画とはアクションの描写なのだ。話すことや、何者なのかということは必ずしも必要ではない。
(中略)
多くの野心的だが経験不足の脚本家は、登場人物の身の上に、何かが起こるように書いてくる。その結果、登場人物は常に周りの状況に反応するだけで、”ドラマ上の欲求”に向かって行動するのではなくなってしまう。しまいには、人物が脚本から消えてしまう。これは、脚本を書くプロセスでよく起きる問題だ。(pp.239-240)

巻き込まれ型でも、どこかでリアクションからアクションに変わる。

批評ページを作る

壁にぶつかったときの対処法の一つとして紹介しているのが「否定的なコメントが頭に浮かんできたら、それを批評ページに逐一書いていく。」(p.278)という方法。
それらをあとで見直すと、実は同じ事ばかり言っていることが分かるそうだ。

how-toではなくwhat-to

これはHow-toモノの本ではない。どうすれば脚本を書けるかを教えることはできない。人それぞれが、自ら脚本の技を会得するしかないのである。私に出来ることは、素晴らしい脚本を書くには何をしなければならないのかということを示すだけだ。そこで、この本を、what-toモノと呼びたい。つまり、何かアイデアを持っているが脚本を書けない人のために、何をしなければならないのか、それをどのようにするのかということを示すのである。(p.333)

具体的なアドバイスを緻密に一冊に渡って解説しておいて、最後にこういうことを書いてますよ、この人。
でも、実際その通りで、書くという行為そのものは自分でやるしかない。本書で書かれているのはある意味で、準備の話がほとんどです。

ゲームに使う例

http://www.slideshare.net/nyaakobayashi/ss-12559078 に、「マルチエンディングタイトル向けシナリオ構成メソッド」というのがあるのだが、ここでもシド・フィールドの方法論を前提にした解説になっている。