k-takahashi's blog

個人雑記用

数式アレルギー

結城先生の連ツイがここにまとめられている。

《数式アレルギー》という言葉を聞くたびに、お腹をノコギリで切られるような痛みを感じます。「私は数式アレルギーでして」みたいにいうのを責めているわけじゃない。でもその《言い訳》が社会に与える意味を思うと、お腹がぎりぎりぎりぎりと痛む。あなたはどんな意味でそれを言ってるの?

「私は数式アレルギーの文系でして」とへらへら笑う大人に耳を貸すな。 - 結城浩の連ツイ

この後に結城先生らしからぬ強い調子の言葉が続き、これはよっぽど腹に据えかねることがあったんだろうなと思ったが、さすがに強い言葉なので反発する人も少なくないようだ。(ここにもチラホラと)


趣旨は後半にある

何を怒っているかというと「私は数式アレルギーでして(てへ)」といってる(自称)大人に怒るのだ。勉強不足を恥じろよ。若者を自分のレベルまで落とそうとするなよ。文系ですからなんていうなよ。きょうび文系でもしっかり数式はよむぜ!若者を自分のレベルまでおとしめようとするのに腹が立つのだ。

「私は数式アレルギーの文系でして」とへらへら笑う大人に耳を貸すな。 - 結城浩の連ツイ

であり、さらには

全員が数式を数学者のように読めと言っているのではない。そうではなく、歴史的な《知》に対する敬意が感じられない発言に腹を立てているのだな、私は、きっと。

「私は数式アレルギーの文系でして」とへらへら笑う大人に耳を貸すな。 - 結城浩の連ツイ

だろう。積み上げられてきた「知(智)」に対して敬意を払わないのは、学ばない態度・調べない態度の正当化に通じるもので、若者が粋がるのはともかくいい大人の態度ではないだろう。


ちょっと前になるが似たような怒りの文を読んだことがある。再引用しておく。

総合司会者のマット・ロウアーがこの実験を伝え、話が終わるとケイティ・クーリックとブライアン・ガンベルは、その原稿を読むのは大変だったでしょうね、とコメントした。これで三人はどっと笑い、ロウアーは、今話したことを実は理解していないんですよ、と白状した。ここでちょっと考えて欲しい。アメリカを代表するジャーナリスト三人が、なんと自分が科学を知らないことを笑い飛ばしているのだ! もしこれがセルビアのニュースで、セルビアの場所を三人とも知らないことを笑い飛ばしていたら、どれほど違った状況になっていただろう?
もちろん、私はひどく憤慨した。この出来事が、実は私を「イケナイ宇宙学」の議論の道へと踏み込ませた。数億のアメリカ国民が、最も簡単なたぐいの科学ニュースも理解できない人から情報を得ているのだと知って、行動を起こすことにしたのだ。報道自体は正確だったし、スペースシャトルでしていた実験を熟知する人が書いたのかもしれない。だが大衆は、三人の著名なジャーナリストが「科学を知らなくても大丈夫」と暗黙のうちに語る姿を目にしたのである。

『イケナイ宇宙学』*1の(pp.6-7)より


専門外のことが分からないのはある意味しょうがない。が、不勉強を正当化するジャーナリストはアメリカに限らないことが、

毎日新聞記者でもある佐々木俊尚氏は25日のツイッターで、「昭和の時代の昔気質の新聞記者って、本読まなかった。私は現役時代、記者クラブで本読んでると、よく『本なんか読む暇あったら夜回り行ってこい』と怒られました。昔の記者は『本なんか読まなくていい。取材相手から勉強すればいいんだ』という考えで、だから取材先になめられる」と書いていた。

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 鳥越氏にみる「現場主義という名の不勉強」 : J-CASTニュース

から分かる。学ばない・調べない・考えない態度である。孔子先生は、考えるだけでも学ぶだけでもだめで両方が必要だと説いたが、さすがにどちらもしない人が偉そうな顔をするとは思ってなかっただろう。


もちろんちゃんとした人達・組織もある。最近の例だと

2年に渡るウナギ取材で、WEDGEは200万以上(もう少し使ったかも)の取材費をぶっこんでくれた。裏付けはすべてとった。関係者の誰に、なにを突っ込まれても堂々と反証できる。こんな仕事をさせてもらえるなんて書き屋冥利に尽きる。

鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO on Twitter: "2年に渡るウナギ取材で、WEDGEは200万以上(もう少し使ったかも)の取材費をぶっこんでくれた。裏付けはすべてとった。関係者の誰に、なにを突っ込まれても堂々と反証できる。こんな仕事をさせてもらえるなんて書き屋冥利に尽きる。"

とか、取材した方もさせた編集も立派だと思う。

*1:

イケナイ宇宙学―間違いだらけの天文常識

イケナイ宇宙学―間違いだらけの天文常識