http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2007/01/24_cbbe.html
彼らは、成果が見込めると判断したならば、無茶に思えるスケジュールだって組むし連日の徹夜だってやる。旧NASDA系なら「そんなことをしたら成功率が下がる/安全が見込めない。もっと予算と時間をかけないといけない」と考えるところも「こうやって工夫すれば大丈夫」と頭をひねって突破してしまう。
その意気込みは買う。現場は当然そうだろう。だが、マネジメントレベルはそれでいいのだろうか?
というのは、松浦さん自身が関与した「宇宙へのパスポート3」*1にこんな記述があるのだ。
今回の運用でスタッフの経験値もスキルもめきめき上がっているのだが、こんな人力に頼る体制で成功してしまっていいのだろうか、という話も聞いた。
なにせ、NASAやJPLから来ている連中が青ざめるような勤務態勢がまかり通っているのである。
NASAでは8時間労働が徹底しており、すべてのスタッフは定時まで働いたら帰らされ、寝させられる。労働基準が徹底していると同時に、疲労によるヒューマン・エラーの防止にもなる。ところが、宇宙研では「はやぶさ」に限らず労働基準法も何も無視した長時間勤務、連続勤務が続いている。まさにブルース・マーレイが心配したとおりの状況になっているのである。
こんな、スタッフを酷使する状況で成功しても、それは本来あるべき体制ではない。だが、日本では一度成功してしまうとそれがどんな酷い状況だろうとそれは顧みられず、次回以降、さらに困難な状況でさらなる成果を求められるようになるのは珍しいことではない。(同書、p.371)
およそプロジェクトの管理に携わった経験のある人なら、この状態を放置するが危険だということには同意して貰えるだろう。この部分は笹本氏によるものだが、松浦氏が知らないはずがない。マネジメントレベルの人間が、「頑張ればなんとかなる」という発想では困るのだ。そして、松浦氏も、もはや現場で一緒になって騒ぐ立場にはない。
宇宙研を擦り切らせて人材を潰してしまうリスクを冒してでも、今すぐ「はやぶさ2」を実行しなくてはならないほど、状況は切迫しているのか。もしそうなら、リスクを取って進むべきだが、今後も何度かチャンスが見込めるなら、無用なギャンブルをする必要はない。そこをきちんと取材して書くのに最適なのは、松浦氏だろう。
私は、「はやぶさ2」を応援したいと思っている。なればこそ、この点を知りたい。
*1: