k-takahashi's blog

個人雑記用

中堅・中小企業に対する 粉飾決算の見分け方

 

経理の基本的なところは会社でも教育されるし、大学の授業でも何度かやったので大体はわかっている。ただ、それはある程度大きな株式会社を対象にすることが大半。

一方本書は「中小企業」が対象で、分析する立場も融資する金融機関の担当者となっている。

 

一番大きな違いは、資本と経営が分離していないところ。もっと具体的に言えば、会社が多少赤字でも役員報酬や関係者への支払が十分にあれば、トータルとして経営者(兼所有者)は損はしないというところ。いわゆる「経費で豪遊」というのも似たような話。黒字を出して法人税を払うくらいなら、報酬を出して所得税にした方が得なのである。

さらに赤字が出たとしても、繰越欠損金の仕組みを使っての節税を狙っているなら会社(経営者兼オーナー)としては全然問題無いし、銀行から見た融資先としても気にすることはない。よく、「中小企業の大半は赤字」と言うが、このカラクリを頭に入れておかないと実態を見誤る。

 

そういう事情を考慮した上で、節税のための赤字、会社が傾いていることを誤魔化すための黒字、はどのように見破れば良いのか、というのが本書のポイント。金融機関が融資を続けるのか、増やすのか、減らすのかをきちんと判断するのが目的というところが面白い。

 

具体的な経理書類をもとに捏造の具体例を見せてくれるのも面白い。現場の人として参考にするのもいいし、一通りの経理を勉強した後の副読本としても良いと思う。