ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない) (朝日新書)
- 作者: 渡辺千賀
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/12/08
- メディア: 新書
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とりあえず動くソフトウェアができました、というレベルがバージョン1.0。
(中略)
で、「うむ、かなりまともに動くようになった」というところで、2.0というバージョンに改称する。しかしまだ、「時として誤動作することもありますけどよろしくね」というレベル。
(p.10)
つまり、2.0は「結構面白いモンに仕上がりつつありますが、まだまだ危なっかしいです」という程度。ヒューマン2.0も、グローバル化の荒波にアップアップと流されながらもなんとか形になってきたかな、でも時々水没、みたいな感じ(p.11)
本書の半分は、シリコンバレー気風・シリコンバレー生活の紹介である。金がどれくらいかかるか、仕事を探したり、変えたりするのはどうやるのか、失業してしまったらどうするのか、などが具体的に説明される。シリコンバレー全体が一つの会社みたいなものだ、という言い方が時々されるが、それが「ああ、なるほど」という感じで説明される。生活費の高さは大変のようだ。
一つ面白いと思ったのが、ストックオプション。日本ではボーナスのように捉えられているが、転職を繰り返して色々な会社のストックオプションを持つことは、資産のポートフォリオ化をしているのと同じだ、というところには、ああなるほど、と思った。それに限らず、「一か所に居続ける」ことのリスクを相当意識しているな、というところは、新鮮な指摘だった。
第8章に出てくる「ヒューマン2.0のルール」は、シリコンバレー的生き方をする気のない人にも参考になる。「理論上の本当の自分を捜さない」とかは、日本でも数多ある脱サラ失敗の予防に通じるルールだと思う。(まず小規模に試してみろ、とかは仕事術に通じる。) 無駄なパワーを惜しむというのも、まあ当然である。それが行くところまで行くとシリコンバレー風になるのだが、そういう極端な例を知っておくのは悪くない。 勿論、日本の会社社会にそのまま持ち込むのは無茶なので、適宜アレンジは要るだろう。(愚痴で発散せずに、本質的な変化を起こすパワーとして使え、というのは正しい考え方だと思うが、日本で利用するにはある程度丸める必要があると思う。)
最後に、笑ったところを引用。
シリコンバレーは「オタク」の天国である。当地では「オタク」は尊敬を込めてギークと呼ばれる。同様の意味の英語としてはナードという言葉もあるが、ギークはバリバリに技術系知識があり優秀で使えるヤツ、一方のナードは役に立つスキルがない単なるオタク、というニュアンス。しかし、アメリカでも他の地域に行けば、ナードもギークも区別無く通用することも多い。
フィリピンには「バナナ」に相当する言葉がたくさんあるという。豊富な種類のバナナがあり、それぞれを区別して呼ぶのが当たり前だから、と。日本では同じ魚なのに成長するにつれて名前が変わる出世魚がいる。微妙な差を大切にするくらい豊富に魚が手にはいるから。同様に、シリコンバレーでは右も左も「オタク」ゆえ、「オタク」にもさらなる細分化が必要なのである。(p.40)