- 作者: 山崎雅弘
- 出版社/メーカー: 学習研究社
- 発売日: 2007/03
- メディア: 文庫
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まず、独ソ不可侵条約締結辺りのやりとりや開戦直前の様々な警告の上がり方などが具体的に記されているのが面白い。例の、イギリスの「独ソ対立を煽る陰謀だ」説も紹介されている。
開戦直後のスターリンの混乱ぶりは、従来説とは少々様相が異なるように描かれている。(まあ、独裁者的振る舞いではある。) 委員会がやってきたときに、スターリンが自分を逮捕しに来たかと思って怯えた、という記述にはちょっと驚いた。権力闘争はそれなりに厳しかったのだな。
タイフーン作戦中止から、赤軍の冬季反攻作戦に移った辺りで出されたヒトラーの死守命令が、結果的には正解だった、というのを明言していた。これは最近の主流なのかな。
第3次ハリコフ戦は、スターリン一人の責任ではなく、ソ連軍全体に蔓延した油断が原因としている。
ちなみに、第三次ハリコフ会戦の知名度が低いと書かれていてちょっと驚いたのだが、シミュレーションゲーマーが、「ドイツ戦車軍団」のおかげでよく知っているだけなのかもしれない。
クルスク戦は、ソ連のスパイ網が活躍したという位置づけ。(イギリスにスパイを入れていた、と書かれている。)
独ソ戦史なら充分読んだ、という人にもお勧めです。文庫350ページで通史を読めて、それが結構充実しているのだから。 「ヴ」の表記を避けたという部分は、評価が分かれるかな。確かに読みやすくはあるのだけれど、他の本に手を伸ばしたときに逆効果になるかもしれない。