k-takahashi's blog

個人雑記用

何かを書きたいあなたへ

何かを書きたいあなたへ―ケータイ小説の女王が教える文章術!

何かを書きたいあなたへ―ケータイ小説の女王が教える文章術!

 「ケータイ小説の女王が教える文書術」という煽りに釣られて買ってしまいました。
全体が二部構成になっていて、前半が「何を書くか」、後半が「どう書くか」について解説しており、ケータイ小説については「どう書くか」の一部という扱いになっている。どう書くか、の中身は8部構成で、「日記」「メール」「作文」「ブログ」「エッセイ」「小説」「携帯小説」「官能小説」となっている。
 携帯小説については、

携帯小説の利点

  • 読者が非常に多く、無料サイトでは一日十万アクセスを越えるケースも
  • 一回の分量が原稿用紙三枚程度と、非常に書きやすい
  • すぐに感想がメールで届くので、普通の小説と違って、読者との距離感も近い
  • 本を持ち歩かなくてもQRコードさえあれば読んでいただける
  • 思い立ったら簡単に携帯小説サイトを無料でスタートさせることができる。

携帯小説の問題点

  • 一回の分量が短いので、風景描写などを長々と書き込むには適していない
  • 小さな画面なので、目が疲れてしまうことも。
  • 読者に存在を気付いてもらうためにアピール活動が必要

(pp.185-186)

と整理している。特に市場の大きさは特筆モノで、これだけ読んで貰える小説は極めて少ないし、そのうえ、携帯向けに書き下ろされた小説は不足しているのだという。だから、読んで貰いたい人にはチャンスなのだ、とも指摘している。
 基本的に、著者は、携帯小説も普通の小説も変わりない、と位置づけているが、「タイトルは10字以内」「お話はアップテンポに作った方が受け入れて貰いやすい」などはある。そして、冒頭部分は特段の配慮が必要だと言う。「冒頭の数行で読者さんを引っ張ってこないと、次のページに進むというボタンを押してくれない」 「携帯小説の連載は一話の長さが大体原稿用紙三枚と短いのに、第一話で伝えなくてはならない必要がある」(ので、前振りを飛ばしていきなり事情説明に入る) そして、最後はクリフハンガー、と。


 あと、文体の部分で面白かったのが以下の部分。

私は彼と熱烈に愛し合う仲で、いつでもどこにいくにも一緒だった。

この文が、エッセイだと思って読むと不愉快だが、小説だと思って読むと切なさを感じるのだという。つまり、エッセイと小説の違いは、読者の受け入れ方なのだ、と。それをこの一文で表現しているのはうまい。


 当初の目的は、この携帯小説の特殊性の部分を知ることだったのだが、実際読んでみると前半も愉快だった。
「自分の王道パターンに流行モノを合体させるとネタになる」(著者は年下クンが大好き。なので、流行モノとくっつけて年下クン企画を通していって、そのうち年下クンメインの話も書けるようになった)
「書こうと思っているネタがたくさんあったら?」「全部のネタについて、ブログで冒頭を少しだけ発表する。反響の良かったものから実際に原稿に仕上げていく」(これは小説ならではの方法で、なるほどと思った。)


 常に読者を意識し、読者に喜んで貰うことを著者も心がけている。なにしろ、小中学生の頃の作文の授業で、「教師に受ける文章を書く」ことを実践していたというから筋金入りだ。教師が書いて欲しいだろうと思っている題材について、教師が書いて欲しいと思っている結論の作文を作っていたのだそうだ。イヤな子供だと思うが、でもそれが出来ることは立派だな、と思う。(林間学校の作文で、林業体験を題材に、イイコ結論を書いたりしたそうな。私なら絶対書かないが、そこが入賞出来る人と、お小言を貰うだけの人との違いだ。)

 この、読者を意識するということから、ブログの書き方についてのアドバイスがある。著者は「その人ならではの視点を3点持て。その三点とは、普遍的なモノ、現代的なモノ、個性的なモノ、の3点。これを意識し、目線をズラさずに書けば個性が出てきて、読んでいる人にも面白いものになる、のだそうだ。これはブログを書く人なら意識しておいて良い、有用なアドバイス


 官能小説の書き方も具体的に書いてありますが、ま、そういうのが気になる人は買って読んでくださいということで。
なお、著者の内藤みか氏のサイトは http://micamica.net 。本書を買うとおまけコンテンツが見られる仕組みになっています。(すみません、私はまだ見ていません。)