k-takahashi's blog

個人雑記用

十八時の音楽浴

十八時の音楽浴―漆黒のアネット (ガガガ文庫)

十八時の音楽浴―漆黒のアネット (ガガガ文庫)

 「原作:海野十三」という記述からも分かるとおり、1937年に発表された「十八時の音楽浴」を「跳訳」した一冊。著者は「ゆずはらとしゆき」。
実際には別の短編である「火葬国風景」と組み合わせてさらにエピローグを追加している。


 音楽浴の部分について言うと、かなり原作に忠実(博士は中年の男性から十代の女性に変更されてますが)。昔、世界SF全集で読んでいたはずなのだけど、さすがに記憶はあやふやなので、こちら(http://www.aozora.gr.jp/cards/000160/card865.html)で原作を確認。文体や描写を別にすると実に忠実なのが分かって面白い。これが、一回り外枠を付ける形で翻案(跳訳)されている。


 戦前に書かれた作品を、戦後を舞台にして、ラノベ調で書いているというところは試みとして非常に面白いと思うが、正直なところ、お薦めできるほどの完成度の作品ではない。肝心の跳訳もそれほど効果的ではないように思う。イラストもあまりかみ合っていない。でも、帯に書かれている「サァ甦れ眩想『昭和』 科學が奇ッ怪で卑猥だった時代ョ!」という部分に偽りはない、微妙な安っぽさも含めてその雰囲気は出ていると思う。それは期待してよい。


 他に「跳訳」すると面白そうな小説って何だろう、と思ったが、ありがちなものはアニメとか漫画に軒並み翻案済みのような気がしてきた。