k-takahashi's blog

個人雑記用

ウェブ時代をゆく

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

 福澤諭吉の『西洋事情』と「学問のすすめ」が対になった存在であるのと同じ意味で、ウェブ時代の意味を描いた『ウェブ進化論』と対になった「その時代に生まれる新しい生き方の可能性」をテーマとした本を、いま時をおかずに書かなければと思ったのだ。(あとがき、より)

学問のすすめ」と言えば「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」というくだりが広く知られているところ。諭吉は身分制による貴賤上下の差を否定し、貴賤上下の差は学問によってうまれるとした。梅田望夫は、現時点で社会的評価の高い職業に就き、出世することができるか否かという基準による貴賤上下の差を否定し、貴賤上下の差は「自発的で能動的な強さ」を実行できるか否かで決まるとしている。(ベンチャーにはベンチャーの、大企業には大企業の、スモールビジネスにはスモールビジネスの、それぞれ意義と適性がある。ビジネスの差は貴賤の差ではない、ということ)

 色々な生き方を「ロールモデル」として参照し、消費せよ、と主張する本書は、一つの参照しやすいロールモデルを提供することで、自発的で能動的な強さを身につけるための「第一歩」を促しているのだろう。その意味で充分な内容だとは思う。これが、多くの人にとって役立つかどうかは、5年くらい待てば分かるのだろう。


 「ウェブ進化論」の最大の功績の一つは、「あちら側/こちら側」という秀逸な言葉をその概念とともに世に普及させたことだと思うが、本書の場合は「経済のゲーム/知と情報のゲーム」「高く険しい道/けものみち」がそれに該当するのだろうか。進化論に比べると、言葉としての座りでは負けているような気がするが、これより良い言葉を思いつくのかと言われると、返す言葉はない。でも、「けものみち」はもう少し語感の良い、あるいは少なくともニュートラルな言葉の方がよかったかな。


 以下は、まとめでも推薦でもなく、単に自分のためのメモ。

ウェブ上でスモールビジネスが生き延びられる理由

 amazonがラージビジネス化したのは、リアルワールドで闘う必要があったから。リアルワールドでスモールのままでは勝ち残れない。だからamazonは巨大化した。ルビーやクレイグが巨大化しなくても生き残れるのは、リアルワールドで闘う必要がなかったから、だと思う。

総表現社会の三層構造

 "The Cult of the Amateur"の日本語訳の話が出ないのは、『ウェブ進化論』が出ているからなのだな、と再認識。馴染みのない北米事例を満載した本をいちいちきちんと訳出したところで、回答はとうに出されているのだから。どこかで話は進んでいるのかもしれないけれど、日本では釣りネタにしかならないだろう。

ロールモデル

 実用書としての本書のキモ。ロールモデルのヒントはウェブで「収集」し、そこから直感で判断し、サバイバル戦略はウェブで情報を集めて緻密にやりなさい、と。

 あとは、その実行のための3つのヒント

  • 時間の使い方の優先順位を変えろ
  • やめることを先に決めろ
  • 長期なりたい自分と短期なれる自分を意識して、現実的に振る舞え

パーソナル・カミオカンデ

 個人的に気に入った単語。これがウェブから提供されているのだから使いなさい、ということ。

危険な組織の注意事項

  1. 世の中に比べて、おそろしくゆったり時間が流れている
  2. 毎日同じことの繰り返しで変化があまりない
  3. 新しいことをしないことが評価される
  4. 判断の責任を集団に分散する
  5. 幹部に「その会社の」プロが多い

 割と危ないなあ>弊社 これと「30〜45歳の15年間は自覚的に過ごせ」を組み合わせると結構耳が痛い。