k-takahashi's blog

個人雑記用

進化の設計者

進化の設計者 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

進化の設計者 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

 舞台は2036年。冒頭部は、季節外れの台風が北海道を直撃するシーンから始まる。そこから、シミュレーション科学、ユビキタス社会、メタンハイドレード、ホームレス問題、優勢思想にID論、ITを利用した直接民主制に人種差別問題まで話は広がる。色々と取材したのでしょう、様々なネタが披露されている。(ちなみに、ブログや掲示板は滅びているそうです。)
 ただ、ちょっと未整理のまま詰め込みすぎた感がぬぐえない。新人の初長編なんかだったらこれもありなのかもしれないが、林譲治ともなるとさすがに新人扱いするわけにもいかない。 詰め込みすぎの弊害は、氏の欠点の一つである人物造形・人物描写にも出ていて、うまくバリエーションができていない。というか、いつものパターンだけになってしまっている。


 色々と消化不良で、もったいないできになってしまったと思う。帯にある「次なる進化の階梯を予兆」にターゲットを絞って、いっそ阪神北のエピソードだけにしてしまったほうが面白かったかな。JAMSTECへの取材が本書に大きなインスピレーションを与えたというのは分かるので、少々無茶な言い分かもしれないけれど。