k-takahashi's blog

個人雑記用

アーサー・C・クラーク死去

 あちこちで報告されているが、現地時間の3月19日にコロンボで死去。90歳。
ローカス(http://www.locusmag.com/)のニュースでは、

  • 2001年宇宙の旅」の共著者として知られている
  • 代表作は、「幼年期の終わり」「都市と星」「宇宙のランデブー」
  • ノンフィクション作家としても知られており、代表作は「惑星を飛ぶ」「未来のプロファイル」"The Promise of Space" "Spring, A Choice of Futures" 「楽園の日々」
  • 短編では、「90億の神の御名」「星」「メデューサとの出会い」「太陽系最後の日」「前哨」
  • クラークの第3法則(充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない)も広く知られている

だそうです。


 私が最初にクラークの小説だとして意識して読んだのは、「太陽からの風」。

途方もなく大きな円形帆は、帆索をぴんと張り、惑星の間を吹く風を受けて、もういっぱいにふくらんでいた。あと三分でレースは開始されるのだが、いまジョン・マートンは、この一年間のどの瞬間よりも楽な気分でおちついていた。会長がスタートの合図をしたときに何がおころうとも、ディアーナ号が勝とうと負けようと、彼の大望は達成されたのだ。一生を他人のための宇宙船の設計に費やしてきた彼は、今こそ自分の船を帆走させるのだった。

宇宙の冷たさと宇宙野郎達の静かな熱さはクラシック宇宙SFの定番でした。


 そして、私の読んだ中で、最も青臭く気恥ずかしい小説の一つが「太陽系最後の日」

 はたしてこれは、何ぴとの責任であろうか? そうした問題が、たえずアルヴェロンを苦しめ続けた。三日のあいだ考えぬいたが、ついに結論に達しえなかった。かれがもし、もっと文明のおくれた種族に属し、もっと感受性のにぶい生物であったら、これほどまでに心を悩まさずにすんだかもしれない。運命の作用に生物が責任を持つ理由はないと、一言のもとにいいきることができたからだ。
 しかし、アルヴェロンとその種族は、はるか悠久の過去から、この全宇宙の貴族であった。宇宙史の黎明このかた − 太初の、そのまた以前から存在している、ある不可解な力によって、時間による秩序が宇宙にもたらされてからこのかた − かれらはつねに、宇宙の王者であった。

SFマガジンの創刊号に掲載されたことでも知られる作品であり、人間が登場しないSFとしても知られる(アルヴェロンというのは、太陽のノヴァ化に気付いて地球人救出に赴いた宇宙船の船長の名前。彼らは地球上に遺棄された都市や設備だけしか見つけられず、地球を後にすることになる)。 この大げさな言い回しは今となってはとても書けない文章だと思うし、クラークの作品が愛された理由である科学技術への信頼と楽観主義とが特に強烈に現れている作品でもある。


 追悼代わりに、両短編を読み直してみた。文章も構成も多少古くさいが、古き良きクラシックSFの最上級の作品です。