k-takahashi's blog

個人雑記用

人間の測りまちがい

人間の測りまちがい〈上〉―差別の科学史 (河出文庫)

人間の測りまちがい〈上〉―差別の科学史 (河出文庫)

人間の測りまちがい 下―差別の科学史 (2) (河出文庫 ク 8-2)

人間の測りまちがい 下―差別の科学史 (2) (河出文庫 ク 8-2)

 原書は名著として知られており、グールドの最も重要な著作の一つとも言われている。内容の重要さについては、書評などを参照してください。
 ただ、値段が高い(文庫なのに1冊1500円!、2冊で3000円!)。あと、訳文がどうにも不安定なのも気になる。書き方が緻密に詰めていくタイプなのと、分量の多さ(上下で700ページ強)ともあって、正直読みにくいです。時間も結構かかりました。


 書評などを読んで関心を持った場合は、下巻のpp.255-298の約40ページ分「ベルカーブ批判」のところをまず読んでみてください。当時出た本の内容を批判した文章ですが、本書全体のサマリーにもなっています。それで、もっと読みたければ上巻から。

彼らの定式化では、知能とは、
1.単一の数値として表されるはずであり、
2.その数値により人々を直線的な序列でランクづけでき、
3.遺伝に基づいており、
4.事実上不変のものである。
もし、これらの前提のどれかがまちがいなら、主張全体が崩壊する。
(「人間の測りまちがい」下巻 p.258)

簡単に言うと、これらがどのように間違って研究・調査・分析・提案されてきたか、社会的に悪影響を与えてきたか、というのをひたすら説明しているのが本書です。科学的に研究しようとしているはずが、間違い続けてしまった。そんな歴史が、様々な資料を分析して語られています。分析を間違っている場合、データの集め方が間違っている場合などもあり、そういうときは資料を丹念に読み解くとまちがいがきちんと指摘できてしまうこともある。それほどに先入観の影響は大きいということがよく分かる。


 ところで、本書は「知能」の測りまちがいを解説しているが、日本ではほとんど同じことが「性格」で起きている。言わずとしれた「血液型性格分類」というやつである。数値化していない分だけましとは言えるが、上記の「定式化」とほとんど同じであることが分かる。そして、血液型で性格を分類できるという信者の暴れっぷりは、 http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1202024086 でも分かるとおり。こういうことが「知能」で起こっていたということなのでしょう。測定が変だったり、サンプルが偏っていたり、統計処理を間違ったりするところなんかそっくり。そして、それは信じた方が有利になる人達によって、「科学的」の名の下で、信じられ、押しつけられてきたというわけです。