火星の長城 (ハヤカワ文庫 SF レ 4-3 レヴェレーション・スペース 1)
- 作者: アレステア・レナルズ,中原尚哉
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/08/25
- メディア: 文庫
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本短編集では、連接脳派の太陽系脱出や、各派の軋轢などが語られている。
各派の軋轢という点では、「ウェザー」が面白い。異なる価値観に生きる人々の物語で、淡い恋的なものも描かれており、とっつきやすい。
5本目の短編「ダイヤモンドの犬」には、シルベステやカズム・シティという単語も登場し、シリーズの背景という点からも興味深い。しかし、それ以上にこの作品では、環境に対抗するための肉体改造というシリーズの根本設定の一つを、特殊な環境とそれに立ち向かう狂的な熱意という点から凝集して描いている。粗筋だけだと狂気とグロテスクさを追った作品に見えるかもしれないけれど、シリーズ世界観の結晶と捉える方が当たっていると思う。