k-takahashi's blog

個人雑記用

シャーロック・ホームズ・イレギュラーズ

シャーロック・ホームズ・イレギュラーズ ~未公表事件カタログ~

シャーロック・ホームズ・イレギュラーズ ~未公表事件カタログ~

 巻頭がいきなり「ドラキュラ紀元」のキム・ニューマンのインタビュー。

私が「ドラキュラ紀元」からホームズを外したのは、彼のキャラクターがあまりにも強すぎて物語を乗っ取ってしまい、「ホームズの物語」になってしまうと考えたからです。私は、ホームズならば最初の殺人現場を一目見ただけで、即座に推理を展開し、プロットを破綻させてしまうと考えたのです。(p.9)

と、ホームズを扱うのが決して楽ではないことを仄めかしている。


 本書のポジションは「シャーロック・ホームズは、それ自体一つのジャンルである」というもの。

シャーロック・ホームズの名は誰もが知っている。右手に大きな虫眼鏡、左手にキャラバッシュのパイプ、頭にディア・ストーカー、インパネス・ケープを纏えば、スヌーピーでも、ドラえもんでも、ホームズになりきっているのは一目瞭然、さらに「初歩的なことだよ、ワトスンくん」と口にすれば、完璧だ。
 しかし、これらの要素の内、ドイルが書いた正典の本文に出てくるものは虫眼鏡くらいだ。あとは挿絵や舞台、映画などによってホームズの必須アイテムに付け加えられていったものばかりである。
 その意味で、私たちがイメージする「シャーロック・ホームズ」はすでにアーサー・コナン・ドイル卿が創造した偉大な探偵とは別物と言うことになってしまう。それは正典よりもむしろ(広義の)二次創作物によって形成されたものなのだ。(p.38)


 ということで、古今東西の「ホームズ・ジャンル」の作品紹介や、分類などを紹介しているのが本書。まあ、あるは、あるは。呆れるほどある。
 記事は、日暮雅通、北原尚彦、原田実、平山雄一といったメンバーが書いているので、かなり細かいです。


 執筆者の対談があって、その中に「なぜ創作欲が湧くのか」という部分がありました。

  • 適当に緩くて、埋められる隙間がある
  • ドイル自身が語られざる事件をやたら出すくせに
  • リュパンはルブランの年代設定があいまい
  • 短編中心で60という量がちょうど良い

分量については、最近はICTの助けが借りられるのでもっと多くても大丈夫なのでしょうが、設定の細かさと緩さのバランスが大事なのでしょうね。日本でガンダムの、それも初期が人気があるのも同じ理由かも。(もちろん、元作品の魅力というのは大前提ですが)