k-takahashi's blog

個人雑記用

軌道エレベーター

 10年ほど前に裳華房から出ていた同名書籍の文庫化。そっちも持っているのだけれど、若干加筆修正があるということで購入。


 読んでみたところ、それほど大きな変更はない模様。ただ、情報のアップデートはある程度されている(「夢の新素材 カーボンナノチューブ」という記述を見ると、10年でずいぶん変わったこともあるのだなと思う)。でも、簡潔明瞭にまとまった良書なのは今読んでも同じ。興味があるなら買いでしょう。こっちを読んでから、エドワーズの本*1に進むのが楽だと思う。


 ああ、そういえばと思ったことがあったので、その部分を引用。

 特性高とか破断長とか言われている数字がある。ケーブルに使う素材の性能を示す値で、太さ一定のケーブルを作り、1Gの一様重力場にぶら下げたとき何キロまで切れずに持つかという数字のことである。これ4960キロメートル以上あれば、それは起動エレベーターのケーブルとして使えることを意味する。という説明の後で、

アーサー・C・クラークは、4950キロメートルというこの数字を、ロケットが地球重力場をふりきって宇宙へ脱出するために必要な「脱出速度」にちなんで、「脱出長」と名付けた。
つまり、破断長>脱出長
となるような破断長を持つ材料を見つければよいことになる。(ロケットではこれが、
ロケットの速度>脱出速度
となっているわけである。(p.82)


 もう一つはエレベーターの安定性の話題から。

静止軌道上ならば、原理的にはどこに建設してもよさそうなものだが、実際にはそう話は簡単ではない。
というのは、地球の重力場は完全な球対称ではなく、赤道で輪切りにしたその断面はわずかにでこぼこしている。つまり、同じ赤道上でも、場所によってわずかながら重力場の大きさに違いがある。従って、静止衛星軌道上に放置された物体は、しだいに重力ポテンシャルの低い場所へと流れていってしまうのだ。

現実世界では、ガラバゴス上空の西経90度付近と、モルディブ諸島上空の東経73度付近とのこと。ある種の宇宙の墓場ですね。エレベータの起動安定なら、推進剤をあげればいいので、あまり問題にはならないような気もする。



 巻末に、金子隆一氏と宇宙エレベーター協会の大野会長との対談収録記事もあります。
来週末にクライマーのコンテストがあるんですね。http://jsea.jp/ja/2009-04-23-About-JSETEC

*1:

宇宙旅行はエレベーターで

宇宙旅行はエレベーターで