k-takahashi's blog

個人雑記用

NOVA 3 〜最初と最後の作品だけでもどうぞ

 大森望の新作SFアンソロジーも好調につき3冊目。


とり・みきの『万物理論「完全版」』はほとんど楽屋落ちに近い展開。もっとも、最後は「はたしてSFは消滅するのか、それとも新しい夢のような世界がくるのか」と振った上で、「ありません」と落としている。(が、これが本冊の最後への伏線だとは思わなかった。)


『ろーどそうるず』はセンサー経由の知覚とAI同士の会話が楽しい。ネタはベタだけど爽やか。『カナンのメガリス3Rは本物のオールラウンダーだ』なんて燃え台詞も。
メデューサ複合体』の方もAIが出てきてしゃべるのだが、人と機械のタッグ。こっちはいかにも谷甲州らしい展開になっていく。


『想い出の家』と『東山屋敷の人々』は、格好良く言えば、ARや抗老化テクノロジーによる人間関係の変貌を描いている短編。前者は笑えて、後者は苦虫って感じか。


とか、面白がって読んでいたら、最後に爆弾が控えてました。『希望』。
緊迫感あふれる文章で、コミュニケーションと世界知覚の危機を語っていくのだが、様々なモチーフがてんこ盛り。同じ瀬名秀明の短編集「第九の日」のような読後感。
キーワードの一つが「重力」なんだが、LHCと重力の話をそっちにもっていくのか、というところも。
大森望の紹介記事には「危険なヴィジョン」という単語があり、たしかにそういう作品だった。本冊イチオシ。