k-takahashi's blog

個人雑記用

中国の女 〜苦界で生きる

潜入ルポ 中国の女

潜入ルポ 中国の女

産経新聞北京支局記者の福島香織が、中国女性の生き様という切り口でまとめたルポルタージュ

北京という政治の街で女性の視点が何を映し出すか、という、紋切り型の期待が本社から寄せられていた。
そういうものの考え方自体が、女性蔑視だとか時代遅れだとか、言われかねないのだけれど、確かに同じ女性の話に耳を傾けるとき、おそらく男性記者とは全く違う、共感や反感や感慨があったと思う。(おわりに、より)

少なくとも取材される側の中国人女性にとっては、男性記者に語るものと女性記者に語るものとは違っていただろう。福島氏の着眼点は妥当だと思う。


辞書を引くと分かるが、「苦界」には遊女の世界の意味がある。本書の前半には売春婦の話が出てくる。これが、非常に嫌な感じにリアル。特に彼女たちの「値段」が。
河南省で100元(p.45)、北京で1000元(p.47)、西平県で30元(p.55)、石景山区の外れで10元(p.94)。もちろん同じレベルの女性がこの値段だというわけではないのだが、低い値段しか付かなければそういうところに行くしかないわけだ。一方で日本人駐在員が引っかかる詐欺で数万元(p.77)、高級売春婦たちが買う売春夫が1700元(p.92)。この辺の数字の感覚が、なんとも言えず。
同じように数百元ほどの金額で人身売買が行われている様子も書かれている。貧しい国ならどこも同じようなもの、貧しかった頃の日本だって大差あるまいと言われればそれまでではあるけれど。


もちろん、そういう境遇から抜けだした女性達もいる。本書にあげられている一人の女性は、家政婦として腕を磨き、外国人の要求レベルをこなし、評判を高めてさらに良い待遇を得ていく。彼女は最後には、金を払って離婚する。売られた花嫁だった彼女は、「買い戻したのは誇りだ」と語る。(p.109)


後半は女傑や若者世代について。立身出生の人あり、人権活動家あり、変な慈善家あり、と様々である。
もっとも、田原(ティエンユエン)という自称アーティストの発言には嫌悪感しか感じなかった。チベット仏教を信仰していると語りながら、チベット弾圧に荷担しているとんでもない輩。福島氏は「それが、今の中国社会を心から肯定しての発言なのか、注目をあびるスタートして無難に生きておくための処世術かはわからない」(p.218)とは書いているけれど。
もちろん、芸術性と人間性は別物なので、アーティストとしては一流なのかもしれない。