k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究 2011年7月号

軍事研究 2011年 07月号 [雑誌]

軍事研究 2011年 07月号 [雑誌]

STOVL空母の記事が複数掲載されている。インヴィンシブルに始まる、ヘリとSTOVL機を運用する空母のことで、スキージャンプ(野木恵一氏は、蒸気カタパルト、アングルド・デッキ、光学式着艦補助システム、の3つを戦後空母の三大発明とし、スキージャンプをそれにつぐ第4の発明としている)を装備し、フォークランドで大活躍することになる。
ただ、現状としては、ハリアーという機体に依存しており、今後もF-35B次第というところが、ウェポンシステムとしては微妙なところ。

大塚好古氏は、米海軍の強襲揚陸艦がSTOVL空母化していることを示している。


F-X選定問題については、小林晴彦氏が記事を寄せており、

  • 「開発遅延のため量産単価が上昇するF‐35や、共同開発機ゆえに量産計画や性能向上計画の実施で足並みの揃わないユーロファイター」をスーパーホーネットがリードしている。
  • ユーロファイターはAESAレーダーの本格開発に着手

といったポイントを指摘している。


ビンラディン殺害作戦の全貌』(黒井文太郎)は、現時点で判明している作戦実施に至るまでの流れと実施状況の解説。

ウィキリークス」が、グアンタナモ収容所の尋問記録を公開したのだ。その中のリビーの長所に、マウラウィ・ジャンという名前が言及されていた。ジャンはおそらくクウェイティとは別の人物だが、いずれにせよ連絡員の情報をCIAが追跡していることが、これでもしかしたらビンラディン側に察知される可能性も考えられた。(p.110)

こんなことで作戦実施がせかされたり、テロリストが逃亡したりしたらたまらないよな、そりゃ。
記事の後半は、ポスト・アルカイダ、ポスト・ビンラディンについて。「パキスタンタリバン運動(TTP)」のハキムッラー・メフスードという組織と人物が有力らしい。


『オーストラリアと東南アジアの国防(その2)』(江口博保)のオーストラリアの方針について面白かったのが以下の部分。

もう一つの任務として、同盟軍とあらゆる地域において活動し、できるだけ防衛戦をオーストラリア大陸から離すという前進防衛戦略に貢献する能力の保持がある。前項で述べたオーストラリア三軍が保有する兵器には、徹底した域外展開能力重視の思想が如実に表れている。即ち、国家の軍事戦略と兵器体系が見事に一致しているのである。(p.165)

として、機動力が高いが、空中機動力は意外に低いという分析をしている。
この「域外重視」は先日の震災支援にも現れていて、4機保有するC-17のうち整備中の1機を覗く3機を派遣してくれている。


『米欧露に見る民間防衛体制』(小泉悠)は、各国の民間防衛体制の現状比較記事。もともと「文民の被害極限」のための活動全般を指し、近年対テロが重視されているというのは各国共通。
ただ、米国ではテロ重視の余り自然災害対策が後手に回ったりしている。
欧州も、対テロ強化という流れは同じだが、きっちり組織化された独仏、手薄なイタリア、といった違いはあるようだ。


バルト三国パルチザン闘争(下)』(斎木伸生)は、ラトビアエストニアの闘争が、共産党・NKVD・KGBに潰される経緯の解説記事。両国とも住民の強制移住やスパイ戦術が有効に機能している。

追記  2012/01/09

小泉氏が上記民間防衛体制について、先日ツイートをしていたので補足。

誤り(1)COGICの中にDDSCが設置されているのではなく、その逆 
誤り(2)DDSCは国防関係の部局も取り込んでDGSCGCになった

https://twitter.com/#!/CCCP1917/status/155468948723339266

要するに2009-2011年にかけて、フランスでは民間防衛と国防をある程度、一元化する改革が進んでいたのだな。さらに2004年には市民保護近代化法によって、有名なORSECプランも近代化されていた。この辺の動きをまったく掴まずに書いてしまったのが痛恨

https://twitter.com/#!/CCCP1917/status/155469364982841344