k-takahashi's blog

個人雑記用

SFマガジン 2011年12月号

S-Fマガジン 2011年 12月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2011年 12月号 [雑誌]

ここ5年ほどの海外短編SFから未訳のものを5編紹介している。
トロイカ』(アレステア・レナルズ)は、謎の構造物の調査に赴いた宇宙飛行士の回想と抑圧体制の強化された第二ソ連での逃避行が交互に描かれている。その二つがもちろん交錯するのですが、謎の引っ張り方が上手い。
『懐かしき主人の声』(ハンヌ・ライアニエミ)は、犬猫SF。メインプロットは単純ながら、ギミックが結構とんでもない代物ばかり。
『可能性はゼロじゃない』(N・K・ジェミシン)は、妙に迷信深い女性の描写から始まる。実は、この世界では確率が狂ってしまっているのだ。日本を舞台にするとまた違った感じになるアイディアかなあ。
『ハリーの災難』(ジョン・スコルジー)は、怪しげな宇宙人と闘技場で3ラウンド戦えという、それこそ藤子SFにでもありそうな設定。
『小さき女神』(イアン・マクドナルド)は、ネパールで女神認定されてしまった少女の成長物語。うまく俗世間に戻れず、人身売買もどきの結婚(これはこれで、カースト制とハイテクの狭間で苦しむ人たちが絡んでいるが)から逃げ出し、と波瀾万丈。女神や悪魔という言葉が、多神教世界とAIとをうまく繋ぐキーワードとなって神話とSFとを融合させている。
スコルジー以外の4編は、名だたるSF賞の候補作となったものばかり。惜しくも受賞は逃したものの、レベルは高いので短編集だと思って買ってもよいと思う。


現代SF作家論シリーズは、小谷真理氏が『アンドロメダ病原体』をネタにマイクル・クライトンを語っている。もちろん、小谷氏なのでジェンダー論の視点で、クライトンの「先取り性」の部分を示している。