- 出版社/メーカー: ジャパンミリタリーレビュー
- 発売日: 2013/07/10
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日本が持つべき敵基地攻撃能力(津々谷格)
我が国の防衛政策の中での敵基地攻撃能力は、「弾道ミサイル防衛システム」を有効に機能させる保管能力として位置づけるのが最も自然であろう。(p.30)
なので、C4ISRの整備が先だという、もっともな指摘。
中国と韓国の巡航ミサイルの脅威(竹内修)
中国の巡航ミサイルの開発着手は1990年代半ば。射程距離については諸説あるが、エンジンの性能が不明なのが要因。(米国防総省は4000キロとしているが、もう少し短いという見方も多い。)
韓国については、北朝鮮が弾道ミサイル強化を明確化した1995年に、最大射程300キロ、弾頭重量500kgのミサイルの開発をアメリカに認めさせている。これが玄武3Cだが、この性能が日本の主要都市を攻撃できるものであることに注意。こちらも情報が少なく、無用の緊張を生みかねない。
尖閣を脅かす中国新空軍基地「水門」(田中三郎)
台湾国防部は、
この飛行場は春暁(日本名:白樺)ガス田や魚釣島(尖閣諸島)に対するもので、日本や米軍機に対し脅威となり得るものである、と分析している。(p.50)
この飛行場は、2009年に建設着手されており、尖閣諸島国有化問題とは関係ないことが分かる。そして、ここには多くの無人機が配備されており、これらが尖閣諸島侵入に用いられる可能性が高い。
北朝鮮の弾道ミサイル「ムスダン」の正体(野木恵一)
北朝鮮はスカッドのコピーから、ノドン、テポドン、銀河、を開発してきた。推進剤にケロシンと抑制赤煙硝酸を用いていることからも分かる。
一方、ムスダンは、旧ソ連のSLBM、SSN-6の発展型。1992年の10月に旧ソ連のミサイル技術者が北朝鮮に引き抜こうとした事件があったが、1990年代にはこのSSN-6の技術を北朝鮮が手中にしていた可能性が高い。
ボーイングEA-18Gグラウラー(石川潤一)
米国の2014年度予算にグラウラー21機の追加が盛り込まれ、豪空軍も2013年度にグラウラー12機を新規購入となったのが、最近の大きな2つのニュース。
グラウラーはF/A-18Fをベースに電子戦能力を強化した機体で、その主体はALQ-99Fジャミングポッド。これはジャミング中の状況認識能力を持つ点が特徴。
こういった電子戦能力は輸出に制限がかかることが多いが、上述の豪空軍については、フルスペック版となることが米議会で認められている。
米陸軍モジュラー・フォースの概要(木元寛明)
86師団タイプの場合、三個の旅団本部があり、そこに六個の戦車大隊と四個の機械化歩兵大隊を組み合わせて三個の旅団を編成する。
モジュラー師団の場合は、三タイプの旅団戦闘チーム、5タイプの支援旅団の配属を受ける。こちらは、最大六個旅団戦闘チームを師団が指揮することになる。
想定する戦闘の規模や、運用が変わってきたということなのだろう。もう少し詳しい解説が読みたかった記事。(日本はどうするの、ということも)
武人OB「JMAS」のアンゴラ復興支援活動(奈良暁)
JAMSは、自衛隊OBによるNGO「日本地雷処理を支援する会」のこと。
主に機械を使用する地雷処理の技術を委譲することが最大の眼目となりますが、しつけや精神的なものをしっかりしなければ、単に技術を教えるということだけではものになりませんので、要員たちの社会風土を踏まえた、難しい、忍耐を要する教育訓練ということになります。作業が危険を伴うだけに、号令や動作の教練的な内容が必要になるので、他のNGO活動とは全く異なり、ミリタリー色彩をおびることになり、武人OBの仕事と言えます。(p.112)
そして、
地雷処理事業はどうしても大きな予算を必要とし、日本のPRのためにもコミュニティ支援が重要ですので、これらの企業、団体の大きな支援がなければ効果的な活動はできません。(p.116)
という意味でも、ちょっと変わった位置づけにある。
JAMSのページはこちら。
AMPVアーマード・マルチパーパス・ビークル
実は米陸軍には、今でも1万3441両のM113が配備されている。数の上では米陸軍の車両の半分近い。当然、最前線で使える車両ではないが、なにしろ数が多く、米国といえども一斉置換はできない。そこで、重旅団戦闘団に配備されている3000両をまず新型にする。
そして、そのそのうちの約1000両が装甲医療車。
現在、2つの提案があり、砲塔無しブレッドレー(BAE社)と装軌型ストライカー(GELS社)の2つ。どちらになるかはまだ不明。
ロシアのサイバー戦能力と組織の実態(小泉悠)
ロシアでサイバー戦の中心的役割を担っているのは、連邦保安庁(FSB)の情報安全保障センター(第64829軍事部隊)。北カフカスに対する攻撃にも関与していた模様。
内務省は主に監視、連邦警護庁は保安、連邦通信・マスメディア省は言論監視、をそれぞれ担当している。なお、ロシアでは一定以上のアクセスがあるサイトは「マスメディア」に分類され、同様の規制の対象となる。
国防省は参謀本部電子戦総局が主担当。教育機関を含むが詳細は不明。
なお、ロシア政府によるサイバー戦の実施として有名なのは以下の3例。「エストニアに対するもの(2007年)」、「グルジアに対するもの(2008年)」これは軍事作戦と同時に行われた、「キルギスタンにたいするもの(2009年)」米軍を追い出せという圧力にあわせたもの。
可視光・紫外・赤外線を使う光学センサーのすべて(井上孝司)
紫外線については、こういう事情もあるそうだ。
赤外線と紫外線の使い分けは、バックグラウンド・ノイズと関係がある。つまり、低空を飛行することが多いヘリコプターや、地上から飛来する地対空ミサイルの脅威を想定する輸送機では、赤外線を使用すると地表や地上の物体が発する赤外線がバックグラウンド・ノイズになって探知を妨げてしまうので、紫外線を使用するわけだ。航空を主な活動の場とするF-22はそうした問題が少ないので、赤外線も併用している。(p.231)