k-takahashi's blog

個人雑記用

狂気とバブル

狂気とバブル

狂気とバブル

副題は「なぜ人は集団になると愚行に走るのか」。原題は "Extraordinary Popular Delusions and the Madness of Crowds"(尋常でなく受けた妄想と群衆の狂気)。中身は「経済バブル」(ミシシッピ計画、南海バブル、チューリップバブル)、「人殺しの狂気」(毒殺、決闘)、「奇跡と未来への妄想」(予言、売らない、磁気療法、毛髪、幽霊屋敷、流行語、泥棒崇拝、聖遺物)、「憤怒」(魔女狩り)、「探求」(錬金術)、「宗教」(十字軍)と続く。
紙の本では600ページを越し、Kindleの位置ナンバーも14000近いボリューム。


日本語訳が出たのは10年前(2004年)だが、原書はなんと1852年。日本はまだ江戸時代である。そこから150年以上読み継がれており、出版社が付けた帯には「150年間、世界的大ベストセラー」とある。


出版元がパンローリングという投資系の本を出している会社なので、第一部のバブルのところを推しているのだとは思う。
しかし、それに加えて、様々な愚行がこれでもかという感じで書かれている。
訳文の質が低いのか原文がごちゃごちゃしているのかは分からないが、読みにくいところが多い。それに、正直細かい記述が多すぎてくどいとも思う。(様々な錬金術師の顛末や、魔女狩りの告発文などが事細かに書かれているのは、面白いと言えば面白いけど、さすがに長い)。


ただ、本書を読むと、人間同じような愚行を繰り返しているんだなという悲観と、それでも最近はましになっているのだという楽観とが同時に感じられる。


幾つか引用。

大きな災害が起きると、軽々しく人の言うことを信じたりだまされたりする人が激増するのが世の常である。(No.3505)

科学がそのベールをはがし、得体の知れない恐怖心をすべて取り払ってくれた。狼のように残忍な者は、魔女進行が支配していた時代には火刑台送りになったが、今では病院に収容され、(No.6692)

大きく貢献したのは、笑いものにされるのではないかという恐怖心だったのである。(No.11932)

この辺の洞察は、19世紀に書かれたものとは思えないくらい現代に通じている。


ノストラダムスが出てきていて、すでにインチキ占い師として描写されている。本書が江戸時代に相当する時期に書かれていたことを思うと、日本のノストラダムスブームはなんだったんだろうな、という感慨も。