k-takahashi's blog

個人雑記用

カント・アンジェリコ 〜あの歌は危険すぎる

人工的に作られた美青年。その歌声がヨーロッパを破滅に導く。
というのはウソではないぞ。本当にそういう話。


高野史緒と言えば、江戸川乱歩賞の『カラマーゾフの妹』が代表作だと思うけれど、個人的にはデビュー作の『ムジカ・マキーナ』が一番のお気に入り。あの暴走っぷりの面白さは多少のアラなど吹き飛ばす。
その高野氏のデビュー第2作で1996年の作品。濃厚に『ムジカ』の影響があって、18世紀パリが舞台のくせに、ルーヴル宮は電飾に彩られ、電話越しのネットワークがあって匿名でおしゃべりしていたりする。


内容は、アマゾンによると

バチカンから逃げたカストラートの謎を知った枢機卿は彼をパリに追い、変死する。天使の美声はなぜ危険なのか。著者が驚愕の想像力により創り出した世界のなかで、十八世紀パリは、鮮やかな照明の煌めきに彩られ、惨劇の幕は開く。物語の力で、歴史をも塗り替える、江戸川乱歩賞作家によるSF大賞候補の傑作。

となっている。
今の目で見れば事件のネタバレは簡単で、カストラートの歌声でネットワークをハッキングできるという話。当時(1996年頃)はモデム使ってましたからねえ。


とはいえ、この程度のネタバレでは魅力は損なわれない。芸術趣味と歴史趣味と悪趣味がごちゃ混ぜになった派手派手な高野ワールドが展開。終盤は実に絵になる(声とハッキングだけど)。細かい(細かいじゃ済まないような気もするが)不満はあれど、世界設定とその暴走は実に面白い。小説としての完成度は最近の作品の方が良いので、『ムジカ・マキーナ』が好きな人限定でお薦め。


少々登場人物が分かりにくいような気がしたけど、音楽描写の部分を私がうまく捉えられなかったからかも。同じような人は人物メモを作りながら読んだ方が混乱少ないかも。