- 作者: 西田 宗千佳
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2016/11/11
- メディア: Kindle版
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見栄えがすることから、ARモードの存在をもって、「 ポケモンGOはARゲーム」という言い方をされることがある。だがその評価はちょっと違う。ARモードは一種のおまけであり、プレイを続けるうち、面倒になって使わなくなる。
ポケモンGOはまったく違う意味で「AR的ゲーム」である。それは、子供の頃ポケモンをプレイしていた時は脳内にあった「街中にポケモンがいる」という状況を、実際の街の中に再現したことにある。ARの本質は、脳内の「妄想」が持つリアリティを、現実と感じられる程まで高められるということにある、と筆者は考えている。ポケモンGOはスマートフォンという窓を介して、ポケモンの世界と現実を一体のものに感じられるようにした。その行為がなにより「AR的」なのである。
(No.266)
ということで、ポケモンGOの解説本でもあるし、スマホゲームの解説でもあり、位置情報ゲームの解説でもあるけれど、それ以上にARの解説本である。
そして、単なる映像重ね合わせということではなく、マルチレイヤーを実現したことが大事だというところに進む。
そのマルチレイヤーの見せ方の一つが位置情報を介したポケモンGOやイングレスであるし、「記憶のポケストップ」や「未来へのキオク」であり、スナップチャットの顔加工写真である。
そうしたマルチレイヤー表現というところに着目して、今回のポケモンGO騒動の先を考えようというような話になっている。
だから、人間が見る情報と機械が見る情報の違いの話もある。
本書には詳しく書かれていないけれど、その先には既存勢力がマルチレイヤーを支配することの正統性の有無の話もあるし、それぞれが違うものを見ているということではフィルターバブルの話にも繋がっていくだろう。
ということで、ブーム便乗本ではないです。位置情報の使い方やビジネスの話ももちろん出てくる(ツーリズムやコラボの話も)けれど、多層重畳情報社会への一歩という辺りが面白いところ。