紹介は、こちらが詳しい。
本作はクトゥルー神話を題材にしたテーブルトークRPGだ。KADOKAWAから発売されている「新クトゥルフ神話TRPG」(以下,CoC)を筆頭に,同じ題材を扱うタイトルがいくつも先行する中にあって,このタイトルにはいかなる特徴があるのか。本稿では,その魅力の一端をご紹介させていただきたい。
クトゥルーTRPGに新たな選択肢。12月25日に発売された「暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー」を徹底紹介(短編シナリオ付)
CoCを知っているのはある意味前提となっているところがある。
一番の違いはセッションコントロールを意識しているところ。CoCの場合は古いシステムということもあり、この辺はマスタリングテクニックやシナリオライティングでカバーされているところが大きい。一方ToCでは、「骨子」という構造の規定、シーン切り替えのキーを「核心的手がかり」と限定、核心的手がかりは判定無しで取得、動機による停滞の抑止、<安定度>と<正気度>を分離し変動するのを主に<安定度>の方に集約、など様々な工夫が入っている。そして、それらを実際に運用するときのガイダンスも色々書かれているので、実のところ、ToCをやらない人であっても、CoCのマスタリングガイドとして十分有用な一冊になっている。
セッションコントロールについては、「1/10クトゥルフ」といった工夫も既にあるが、ToCではもう少し多様なシナリオに対応できるようになっている。
メインの舞台を1930年代に持ってきているところが背景情報としての目立つ違い。大恐慌前の狂騒の20年代に対して、暗い30年代といったところ。「社会派」を気取ってこの時代の暗い事件の裏に神話的事件を付け加えろということなのだろうが、そういう需要があるのかどうかは私にはなんとも。(従来でもナチスネタを使うのに困ることはなかったわけで)
神話体系の扱いは細かいところが色々と違っていて、ToCの方が雑多(広範)な印象。
セッションコントロールを意識しているところは、いわゆる「一本道」ではないということをくどいぐらいに繰り返しているところからも伺える。このくどさは、テストプレイ中に寄せられた懸念に応えるということもあるが、実際問題としてしばしば「一本道」化するということでもあるのだろう。
セッションコントロールと一本道回避とのバランスはそもそも難しいところがあり、そこを今後SNEがどういうふうにフォローしていくのか(当然、安田先生は色々アイデアをお持ちの筈)楽しみ。
まずはシナリオ集が一つ欲しい。当然、リプレイ本も出るんだろうけど、リプレイ本を売るという点でCoCとの差異化は難しそうだから、こちらもどうするのか興味深い。