k-takahashi's blog

個人雑記用

戦国武将、虚像と実像

 

歴史上の人物の評価というのは色々と移ろうもの。それは研究によって新たな発見や知見が得られたからという場合もあるが、実際には大衆の好みの変化によるものが大きい。

「歴史を教訓に」とかいう評論家(もどき)はよくいるし、サラリーマン雑誌に「戦国武将に学ぶ」というのも定番だが、そういう話は研究の成果ではなく大衆の好みを反映した人物像をベースにしたものが大半である。与太話ならまだしも、それで社会論だの政策提言だのをするのだから影響は大きい。

 

そのことを戦国武将を事例に解説している一冊。比較的分かりやすい例としては、徳川幕府に都合の良いように解釈が強制されていた人物像に、明治期になって反動が来たことがある(秀吉や真田信繁なんかが典型)が、事はそれほど単純ではない。

 

庶民に人気が出る説というのは、その時々の庶民の趣味に合うものになる。江戸期には一般に野望説よりも怨恨説に人気が出る。改革者信長説に人気が出るのは改革がもてはやされる時期である。秀吉の経営者的性質がもてはやされるようになったのは高度成長期だし、家康の家臣重視像も戦後の家族主義的経営の人気と合わさったもの。

 

そういう人気像の変化の理由の分析自体が面白いし、学術研究とは違うのだよという啓蒙的な位置づけにもなる一冊。