k-takahashi's blog

個人雑記用

ホワイトハウスの職人達

ホワイトハウスの職人たち (新潮新書)

ホワイトハウスの職人たち (新潮新書)

 帯には「彼らだけが知っている歴代大統領一家の内情」と書かれているが、どちらかというと彼らの職人気質や仕事の内容の方が中心で、大統領一家がどうこうというのがおまけ(大統領や大統領の家族の好みを選び取る場面も出てくるが、自分達の仕事を政治的に利用されて憤慨する様子なども出てくる)。


 菓子職人のロラン・メスニエは曰く、

デザートは”幸福”です。デザートを口にした瞬間、人は幸せを感じ、また幸せな時間にはデザートがある。私の仕事は、世界で最も影響力を持つアメリカ大統領に1日5分の幸せを提供すること。大統領がデザートを楽しみ、重責から解放されて笑顔がこぼれたときに、私の1日の仕事は完了します。(pp.14-15)

 他の職人達の態度も、概ね同様である。
 また、

デザートのせいで大統領が太ったり健康を害したら、私は職を失うことになるからです。ホワイトハウスのペーストリーは、味はもちろんのこと、ヘルシーでなくてはなりません。そこには栄養学の知識も必要です。」(p.17)

アメリカのデザートというとひたすら甘いという印象があり、この印象は概ね正しいのだが、少なくともホワイトハウスのペーストリーは異なるらしい。


 本書で扱っているのは、菓子職人ロラン・メスニエ、学芸員レックス・スカウテン、理髪師ザヒラ・ザヒル、料理人ウォルター・シャイブ、仕立屋ジョルジュ・ド・パリ、フローリストのドッティ・テンプルの6人。職人道まっしぐらの人もいれば、ひょっとした縁で仕事に就いた人もいる。ザヒル女史の物語(元アフガニスタン副大使夫人)は、小説のネタになりそうなレベルである。バックストーリー(ザヒル女史に限らず)を読んでいて、スタートレックDS9の仕立屋ガラックや理髪師モットとか、ちょっと連想した。


 ちなみに、仕事がきつい割に給料が安いので、人材確保が大変なのだそうだ。