k-takahashi's blog

個人雑記用

SFマガジン 2007年6月号

 「異色作家特集2」。ロシアのミハイル・ヴェレルとヴァジム・シェフネル、メキシコのロベルト・ロペス・モレーノ、中国の夏茄。一番笑ったのはシェフネルの「沈黙のすみれ」。「お願いがあります。あなたを殴らせてください」という突飛な出だしは、それ以上に突飛かつリアルな展開を見せる。ある意味ホラーでもあり、確かに「異色」度は高い。


 第2回日本SF評論賞の優秀賞受賞作「グレッグ・イーガンとスパイラル・ダンスを」(海老原豊)も掲載されていた。イーガンの短編「適切な愛」「祈りの海」「しあわせの理由」は、人間精神の物質性を前提に理性と感情との対立を描いているが、それを分析したもの。境界を無くし、別の境界を作り出すことを「スパイラルダンス」と言っているようだけど、スパイラルの部分はもう少し説明が要るように思う(というか、私はよく分からなかった。スパイラルと言うなら繰り返しと一定方向への変化とがあるはずで、それをこの3作の中に見いださないといけない)。論文冒頭の"Space"の話との繋がりも、なんとなく「あれれ」という印象がある。
 「適切な愛」がある種の疑似妊娠であることから、代理母問題を使って説明をしているのだけれど、講評にあったとおり、ちょっと長すぎる印象がある。だからといって、そこを削ってもスパイラルの説明には足りないのだろう。イーガンを語るには、やはり1冊クラスの分量が必要ということなのだろうか。