k-takahashi's blog

個人雑記用

ゲーム探検隊

 1989年に出版された同名書の改訂版。ゲームとは何か、ゲームの面白さとは何か、についてまとめた一冊。とりあえず基本文献扱いで良いのだろうと思う。
 面白かったのは第1章と第4章なので、そこを紹介。


 第1章のタイトルは「ルールとは何か」。ゲームのルールとスポーツのルールの違いは何か? 大きな違いは、スポーツのルールには暗黙の前提として人間の肉体的制約があるのに対し、ゲームのルールにはそういった制限がないことである。従って、ゲームのルールは単なる制約だけでは済まない。本書ではそれを「アルゴリズムとしてのルール」という言葉で表現している。そして、そのアルゴリズムが戦略性を生み出すことがあり、そういった洗練されたルールが面白いゲームを生み出す、という言い方をしている。著者が例示しているのはトランプゲームのオーサー(別名:家族合わせ)だが、良いゲームだとキーになるルールがあるわけで、ほぼそれに該当するのだと思う。この言葉は話すのに便利なので憶えておきたい。


 第4章のタイトルは「ゲームの確定性定理と非確定性定理」というちょっと難しめのもの。完全情報・有限・二人・零和ゲームには一方に必勝戦略があるが、それを本書では、「確定」と呼んでいる。そして引き分けを積極的に理論に取り込むと、「確定であるか、あるいは少なくとも一方に避敗法がある」ということができる。これを本書では「非確定性定理」と名付けている。(避敗法の一番簡単な例は、三目並べである。)
 さて、著者(草場純氏)は、この定理を使って「収束/発散」という概念を導入する。必勝法があるゲームを「収束」、避敗法があるゲームを「発散」と大ざっぱに捉えるところから議論が始まる。色々なゲームをこの見方で分類すると、一般に収束型のゲームはアクティブに行動することが望ましく、ちょっとした失敗が勝敗に繋がりやすい。発散型はその逆で、防御的に行動することが有利であることが多く、小さな失敗が勝敗に繋がることが少ない、ということが分かる。更に、安易に収束するゲームはパズルであり、安易に発散するゲームはソリテアであるということができる。そして安易でないルールを持つ良いゲームを、収束/発散の度合いが高い、という言葉で表現することを提案している。
 草場氏は、この収束/発散の度合いをゲームの説明として導入することも提案しており、ゲームの指向性(嗜好性?)を示す良い言葉になりそうだ。


 分類、読みと感覚、運と実力、ゲームの奥の深さ、といったことも記述されている。きちんと整理されているが、内容的には普通。


 コンピュータ(ネット)とカードゲームについては、新規に一章立てて欲しかったと思うが、良い本ですよ。お薦め。