k-takahashi's blog

個人雑記用

ラギッド・ガール

 「グラン・ヴァカンス」シリーズの第2弾。ほとんどSFマガジン掲載時に読んでいたのだけれど、その時は「グランヴァカンス」はまだ読んでいなかったので、あらためて再読。
 確かに「グラン・ヴァカンス」を読んだ後だとだいぶ印象が変わりますね。「クローゼット」なんかは、ガウリが共用スペースに出るシーンを読むまで、これが再読だと言うことを忘れていた。(でも、著者後書きによれば、かなり手を加えたらしい。比較まではしていませんが。) 接続部というか境界面の持つ摩擦・軋轢を「ラギッド」と名付け、それを阿形渓という異形の女性に凝集させたところはうまい(ついでに言えば、「蜘蛛の王」の「父」が口のない女性なのも同趣向)。そのタイプの人が、境界面で無用な苦労をさせられているのは現実でも同じだ。(理屈の上では、オタク系を使っても良いのだけれど、SFファンと親和性が良すぎて読書経験にならない可能性があるということなのだろう。もちろん、この路線で突き詰めるならこっちが良いのだろうけれど。) この意味で、書き下ろしの「魔術師」は、ラギッド・ガールの自然な延長上に読めた。

 仮想世界内での境界の問題はグランヴァカンスでたっぷりと語られていたが、本書は、現実世界内、仮想世界内、現実と仮想世界、と様々な境界の問題が出てくる。
 技術屋視点だと、現実、仮想の両方に豊穣な世界があるのにその交流が絶えている、あるいはねじくれているのは、非常に勿体なく感じる。「なんとか繋げられないか」、と。境界で大変な摩擦が生じる可能性は本書から読み取れるけれど、それでも繋ぎたいな、と。